姉妹の愛情が試される展開はリピート
また『1』が画期的だったのは、プリンセスがふたりいるうえに“白馬の王子様”とのロマンスよりも姉妹愛を描いたことだった。アナとイイ感じになるサザンアイルズ王国の王子ハンス・ウェスターガードなんて男が登場したが、その正体は“白馬の王子様なんていないんだよ!”と言わんばかりに姉妹を破滅させてアレンデール王国を乗っ取ろうとする稀代のワル。古き良きものとされていた王子様との恋が叶うことだけがハッピーエンドではないと突きつけ、それより大事なものがあると訴えることで、これまでのディズニー・プリンセスの物語における定石をひっくり返してしまったのは斬新かつ衝撃的であった。といいつつも、アナはしっかりと運命の男性となる純朴青年クリストフも見つけて恋は逃さないのだが……。
で、『2』も姉妹の愛情が試される展開となっているわけだが、前作のクライマックスがそうだったのでリピート感が濃厚。さすがに『1』の時のようなハッとする驚きと感動までには達しない。
ラブロマンス方面に目を向けてみると、クリストフが密かに計画しているアナへのプロポーズが成功するか否かを追ったドラマも並行される。悶々としている彼は可愛らしいし、ことごとくタイミングを逃す場面も笑えるが、その前に「おまえら、3年も城で同棲していただけかよ!」と叱りたくなる。冒頭で仲良くジェスチャーゲームに熱中している姿を見せられ、てっきり夫婦になったものだと思っていたばかりに肩透かし感もすごかった。
マイノリティをめぐる問題も 新たな顔ぶれは?
さらに今回はマイノリティをめぐる問題も盛り込まれている。かつてアレンデール王国と友好関係にあったものの、ある悲劇に見舞われたノーサルドラというスカンジナビアの先住民族サーミをモデルにした民族が登場する。ネタバレになってしまうので細かくは語れないが、今回のテーマのひとつ“過ちに向き合うこと”だけでなく、エルサとアナのルーツにも絡んでくる重要な存在として機能しているし、クリストフもサーミ人がモデルとなっていることは以前から知られており、“多様性”も訴えた『アナ雪』には相応しい。そうした新たな顔触れのなかで気になったのが、アレンデール王国の黒人中尉マティアス。いかにも北欧なアレンデール王国に黒人がいることに違和感を感じるのではなく、“多様性”に縛られた忖度的配置を強く感じてしまうのだ。『1』に黒人の主要キャラクターが皆無だっただけに、それはなおさらだった。