マシンガンがあげた血しぶきが、数年に及んだ国内最大の暴力団「山口組」の分裂抗争の帰趨をとうとう決めつつある。当初は冷戦とも呼ばれ、ヤクザ史に生じた新たな展開を昔ながらの手法で押し留めたこの事実は、進化を続けてきたヤクザの歴史の終わりを示しつつある。
神戸山口組の崩壊はもはや誰の目にも明らか
12月13日、六代目山口組(組長・司忍)から分裂した神戸山口組の井上邦雄組長と直系幹部の今年最後の集いは、反撃の狼煙を上げる場どころか、さながら通夜の席となった。会合には古参幹部数人が欠席。最高幹部の一人はその日、解散を表明した。崩壊はもはや誰の目にも明らかとなった。
きっかけはひとつだ。11月27日、兵庫県尼崎市の路上で神戸山口組幹部の古川恵一の前に六代目山口組系の元組員が立ちはだかり、ベトナム戦争でも活躍した米国製マシンガンM16で十数発の銃弾を浴びせ、絶命させた。ヤクザ抗争史に残る凄惨な現場だった。
一方、その1週間後に自らがヒットマンとして8月に弘道会組員を銃撃したとして逮捕されたのは神戸山口組最高幹部の一人で、中核二次団体「山健組」トップ、中田広志。元部下がきっちり相手幹部の命を仕留める組織と、トップ自らが動いても命を仕留められない組織。その差はヤクザの世界では自明だ。
「バカなのがヤクザなんだよ」
雌雄は決した、というのが捜査関係者も暴力団関係者も一致した見方だろう。その背後にいるのが10月に出所した六代目山口組ナンバー2の若頭、高山清司だ。
山口組に近い暴力団関係者はいう。
「抗争はもう長くても1年、2年で終わるだろう。あのマシンガンの襲撃は歴史に残るよ。半分引退したような状態だった古川も、永遠に歴史に名を残したんじゃないか。今後は、ピンポイントで神戸の幹部が狙われる段階に入った。たしかに高山は現状を全く分かってない。司もそう、自分で現金すら触ることのない生活を続け、世間ずれしている。高山の出所してからの動きはバカかもしれない。でも、バカなのがヤクザなんだよ」