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2019/12/23

genre : ライフ, グルメ

常連さん限定のコーヒーも

 なじみの常連さんが顔を出したときには15時を過ぎることもあるが、たいてい、14時半には店を閉める。「(その常連さんは)きょうも来るんじゃないかな? あ、きょうは休みか。カレンダーに書いてあった」と話しながら、こちらを見たはるよしさんが一瞬、ハッと慌てたような表情をする。

「あ、いまコーヒー出すわ。ちょっと待ってて。コーヒー出すの忘れてた」
「コーヒーがつくんですか?」
「つかないよ。つくわけねえじゃん(笑)。常連さんだけ、出してる」
「ありがとうございます」

 

「もう沸かしといたんだ。だから、出さないともったいなくて(笑)。時間が来ちゃうとまずくなっちゃうから」
「コーヒーもこだわりがあるんですか?」
「ううん、コーヒーはこだわりない。自分が好きなだけ。自分が好きなの、安くておいしいやつで。それで常連さんにはこういうのを出すの。意外とおいしいでしょ。淹れ方を覚えたの。量があるんだね」

「もうね、自分が努力するしかない」

 コーヒーをいただきながら上部に視線を移すと、はるよしさんと友子さんの調理師免許証が並んでいることに気づいた。ふたりで歩調を合わせながらこの店を守ってきたことがわかる。

「でも、そういうの飾りだよ。もうね、自分が努力するしかない」

 

 目の前に、野菜の煮物が出される。にんじん、椎茸、ゴボウ、鶏肉などが見える。

「はい、食べな。特別だよ。常連さんだけ出してるの。それは味が濃い。ダメか、濃いと?」
「いや、おいしいです」
「おいしい? 俺が煮たんだけど(笑)。自分たちは薄味で、それじゃ食べられないんだけど。常連さんが濃いほうが好きなんだよ。だから濃くしといた」

 

 聞けばお子さんはいらっしゃらず、ご夫婦の代でおしまいなのだそうだ。ちょっと寂しい気がするが、また訪れてみたい。ふらっと立ち寄れる場所ではないけれど、それでも足を運びたくなるような、そう思わせる魅力がこの店にはある。

 ところで私が着いたとき、カウンターだけの店内には3人の先客がいた。しかも全員が20代の女子で、恋の話などしていた。あとから聞いたら近くの学校の生徒さんらしいのだが、若いのにこういう店をチョイスできる子は、きっと将来いいお嫁さんになれるんじゃないかなと思う。

 

撮影=印南敦史

INFORMATION

はるよし&友子
東京都青梅市勝沼2-210-5
営業時間 11:00~14:30頃
定休日 火曜日

タンメン 550円
焼肉定食 750円

 

 

 

 

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