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「ラーメンじゃつまんないよ」東青梅で老夫婦がつくり上げた“あり得ないほど微妙なタンメン”が最高だった!

B中華を探す旅――東青梅「はるよし&友子」

2019/12/23

genre : ライフ, グルメ

note

 中央線の立川から分岐する青梅線といえば、街ぐるみで昭和を再現した青梅駅が有名だ。だが、一駅前の東青梅はとても静かで、そして地味である。

 北口を出たら、旧青梅街道を道なりに左へ。成木街道入口交差点を右折して数分進むと、鉄道公園入口という交差点にぶつかる。あとから聞くと、この日は休みだった鉄道公園は、このあたりでは有名なスポットらしい。要は、他になにもないということだ。

 
 

 ここを左折して、永山公園通りという道を進む。左側に用水路が現れ、澄んだ水が静かに流れている。いい雰囲気だ。……と気を取られていたら、お目当ての店が右側に現れた。

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黄色い看板に真っ赤なのぼり!

「はるよし&友子」

 これが店名である。

 空の青さとマッチする黄色い看板、そして「ラーメン」と書かれた真っ赤なのぼり。もうそれだけで、B中華ごころを充分に刺激してくれる。

 

 着いたのは13時半くらい。カウンターの奥にかかった暖簾の向こうでは、はるよしさんらしき男性と、友子さんらしき女性がなにかをしている。つまり、私が入っていっても気づかない。

「こんにちは」と声をかけると、暖簾を手でよけながらはるよしさん登場。どことなくロックっぽい顔つきで、若いころにパンク・バンドをやっていたと聞いたとしても、そのまま信じてしまいそうだ。

「前から来てみたかったんですよ」と声をかけると、「来てみたかったの? じゃあ、来りゃよかったじゃない」と、当たり前すぎる返事が返ってきた。

 

「ビールはない」「ラーメンじゃつまんない」

「でも、遠いんですよ。荻窪なんで」
「荻窪! じゃあ、損のないように食べなきゃなあ。せっかく来たんだから。なにがいいかな」
「ビールってあります?」
「ビールはない」
「ないですか。じゃあ、ラーメンがいいかなあ」
「ラーメンじゃつまんないよ。焼肉もうまいんだよね。タンメンもめちゃめちゃうまいんだよ」

 いきなりのラーメン全否定(なのにタンメンならOK)。しかもビールなし。その時点で、B中華の定義からは外れる。そう、実をいうとここは中華料理店ではなく、基本的には「お食事処」なのだ。

 

「じゃあ、タンメンで」
「タンメンで行く? ちょっと待ってね。うちのは難しいんですよ、特に。微妙だから。すごい微妙なことやってるんだよ。どう微妙って、どう言ったらいいんだろ。すごい微妙なことやってるね。食べりゃわかるよ」

 どうやら“微妙”は決めゼリフのようである。ともあれ、それはもう食べてみるしかないだろう。