昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

冬でも読みたい「怖い話」

2019/12/29

genre : ライフ, 歴史, 社会

高速移動する怪異が出没する兵庫県

 西日本に目を向けてみると、多数の怪異が出没する県として兵庫県が挙げられる。兵庫県は、なぜか高速移動する怪異が多いというのも特徴だ。

 特に神戸市の六甲山や西宮市の甲山は多くの怪異が語られる。甲山の山道に現れる「牛女」は、頭が牛で体は着物を纏った女性であるなどと語られる。そして自動車やバイクで牛女の近くを通りかかると、ものすごい速さで追いかけてくるなどという。その正体は、かつてある屋敷で生まれた異形の娘で、座敷牢に閉じ込められていたが、第二次世界大戦の空襲によって外に逃げ出したもの、などと言われる。この他にも四つん這いのまま超高速で走る老婆「ターボババア」、世界各地で目撃される未確認生物であり、空中を肉眼では到底捉えられない速さで飛行する「スカイフィッシュ」などが六甲山で出現したと語られる。

怪談界の大スターを生んだ岐阜県

 現代の怪異でいえば、怪談界の大スターを生んだ岐阜県も外せないだろう。道行く人に「わたしきれい?」と問いかけ、「きれい」と答えた人間に対して顔の半分を隠すマスクを取り、耳まで裂けた口を見せて「これでも?」と再び問いかける、そんな怪談で全国を席巻した「口裂け女」は、この岐阜県が発祥の地であると考えられている。当初、ただ口が裂けた女として語られた怪異は、岐阜県を中心に西へ東へと広がり、またメディアで取り上げられるなどしたことで、マスクで口を隠した長身の赤いコートの女や、おなじみの問いかけといった特徴を取得していった。

©iStock.com

 そうして1970年代末から1980年代初めにかけて全国の子どもたちを恐れさせた口裂け女だが、近年では地元商店街の町おこしのために起用されるなど、岐阜県で愛されるキャラクターともなっているようだ。

 このように、怪異・妖怪たちは現代でも多くの場所で語られ、愛されている。彼らはかつて語られた存在ではなく、今も我々とともに生き続けているのだ。

 もちろん、ここで紹介できなかった都道府県においても、そこで語られてきた怪異たちがいる。自分の住んでいる場所にどんな怪異がいるのか、機会があれば調べてみよう。

日本現代怪異事典

朝里 樹

笠間書院

2018年1月17日 発売

歴史人物怪異談事典

朝里 樹

幻冬舎

2019年10月30日 発売

この記事の写真(4枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー