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特集2019年 忘れられない「名言・迷言・珍言」

「中国人は採用しません」発言が突きつけた、「私たちは何に値するのか」

「I deserve this!」と語ったミーガン・ラピノー選手

2020/01/05

genre : スポーツ, 社会

なぜ彼女の言葉は聞くに値するのか?

 ラピノーが名も無い選手、あるいは社会活動自体を生業にしているような人であれば、同じような言葉を発しても、私はその言葉を素通りしていたかもしれない。横柄な態度に腹をたてる人はさらに多かったかもしれない。「I deserve this!」と叫んだ彼女の言葉を思い出す。最高の結果を残したからこそ、伝えられることがある。彼女は確かに、はっきり抗議し、思いを伝え、社会に訴えかけるにふさわしいところに上り詰めた。その資格を得るための、圧倒的な努力を怠らなかった。彼女のプレーを息を呑んで見ていた我々は、彼女のスピーチを聞くために時間を割こうと思ったし、彼女の言葉は聞くに値すると判断した。

©︎getty

 言論が弾圧されない、誰でも自由にものが言える社会は素晴らしいと心から思うし、表現の自由を何よりも堅く信じている。ただ、言論弾圧がない、ということと、誰の意見でも聞くに値する、ということは少し違う。当然聴衆にも聞かない自由はあるし、それこそ安易な批判はブロックしてしまう人もいる。ものを言う資格について私たちは考えるべき時にきているかもしれない。少なくとも、ただただ抗議ばかりしているような運動家や、社会批判それ自体を目的化しているような輩が、時に空虚に見えるのは、私たちが内心、you deserve thatと思えていないからのような気がするのだ。

©iStock.com

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