元号が令和に変わって初めての年が明けた。昨年もたくさんの言葉が発せられ、いくつかが人を傷つけ、いくつかが人を笑わせ、いくつかが人を救ったと思う。「中国人は採用しません」と発したどこぞの大学教員(当時)がいれば、北方領土に次いで竹島についても「戦争で取り返すしかない」と言った国会議員もいる。

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  反面、「身の丈に合わせて」「肉体と精神をどぶに捨てる」「セクシーに」など波紋を呼んだ言葉について、必ずしも批判者の理解が的を射ていないような事案も目立ち、短絡的に言葉尻をとっては短い言葉で批判を繰り返す風潮にも拍車がかかったように思う。複雑な社会にあって、言葉は尽くされるべきだと強く思うが、感じることと言葉にすることの間にある思考があまりに短くなることには懸念を示しておくべきだと思う。

たった3語 ミーガン・ラピノーの言葉

 そんな中で、たった3語の短い言葉であるにも関わらず、心を大きく揺らすものもあった。今夏の女子サッカーW杯で優勝した米国代表の主将の一人であるミーガン・ラピノーは、ニューヨークで開かれた優勝パレードの最中、シャンパンが注がれたグラスを片手に「I deserve this!」と声高に発してそれを飲み干した。W杯で大会MVPのほか、得点王としても表彰された彼女の功績を知る我々からすれば、それは一見、祝福とともに納得すべき勝者のウィニングポーズである。ただ、市役所前でスピーチをした彼女の言葉とともに聞いた時、この「私はこれに値する(これをするにふさわしい、これをする資格がある)」という彼女の言葉は、より含みがあるようにも聞こえた。

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ミーガン・ラピノー選手 ©︎getty

 ラピノーはゲイであることを公表しているほか、ゴールを決めた後などに見せる自信満々な態度やはっきりした物言いによって、米国内でも一部の、特に保守層の反感を買ってきたのは度々報じられていた。国歌演奏で片膝を立てて警察権力に抗議したり、男子選手との賃金平等を求めて運動したりと社会活動家としての側面も持っており、W杯中にはトランプ米大統領のツイッターで名指しで嫌味を言われたこともある。