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グローバルとローカルをかけ合わせた“グローカル”

 そんななかで、選手のなかから生まれた方針が“グローカル”です。グローカルとは、グローバル(国際的)と、ローカル(地方や地域)をかけ合わせた造語ですが、メンバーの約半数を占めた海外出身の選手と、日本人選手との融合を象徴するチームの合い言葉になりました。

 グローカルを実現させるために、コーチ陣も様々な仕掛けを用意しました。1年間で240日を越えた合宿期間中、選手たちを4つのチームにわけて、つねに競い合う環境をつくりました。

 たとえば、コーチ陣は、W杯で勝つためにはどれだけのフィットネスが必要なのか、具体的な数字を示しました。練習中、それぞれの走行距離やランニングスピード、心拍数などのデータがGPSによって、リアルタイムで把握できるのですが、そのデータはコーチ陣だけでなく、選手にもフィードバックされました。グラウンドに設置したモニターに映し出されて、練習中の全員が、ライブで見ることができた。スピードが速い選手は誰か、チーム内で誰のスタミナが落ちているか……。チームに設定された目標を達成するために、選手同士で練習の取り組み方を話し合ったり、ほかのチームに負けないように励まし合ったりする機会が自然に増えていった。

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日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチ ©︎JMPA

ディテールの徹底で勝てると思えた

 同時に、ジェイミーは日本語で「メリハリが大事」とも語っていた。世界一キツいと言われた練習の合間に、チーム対抗で、タッチラグビーやパスを回すゲームをして楽しみながら勝敗を競ったり、チームディナーでは「叩いて、かぶって、じゃんけんぽん」をやってリフレッシュしたりしました。オフの日は、年長の選手たちが声をかけ、日本人や外国人の区別なく、外出したり、食事したりするようになった。こうして“one team”の素地がつくられていったのです。

 また、W杯直前のPNC(アメリカやトンガなど環太平洋の国々と争うパシフィック・ネーションズカップ)で優勝し、ジェイミーが掲げる戦術や戦略を実行できれば、勝てるとみんなが信じられたのも大きかった。

 選手たちがよく口にした「ディテール」という言葉があります。ジェイミーは、持ち込んだボールの置き方や、タックルの入り方などの一つひとつのプレーのディテール(細部)を選手たちに徹底させました。過去の試合の映像やデータなどを見せながら、与えられたディテールを遂行できた場合と、できなかったときの結果を示しながら説明していました。データと結果の因果関係を可視化したわけです。だから選手たちはジェイミーが目指すラグビーをやれば、勝てると素直に思えた。