“one team”について、ヘッドコーチとしてラグビー日本代表を率いたジェイミー・ジョセフは、よく大聖堂の建設になぞらえて説明していました。
大聖堂の建設では、設計士、フレームを組み立てる大工、現場の作業員、ブロックをつくる職人、そして作業後にゴミを片付けるスタッフ……。そのうち1人が欠けても、大聖堂は完成しない。そこにかかわるすべての人が役割をまっとうするからこそ、建設プロジェクトが成功する。だから、我々日本代表チームもコーチ、選手だけでなく、控えのメンバーや用具係、給水係など、チームに帯同するすべてのスタッフが、一丸になって勝利を目指す、ひとつのチームになる必要がある、と。
私もチームの通訳として、2015年からラグビー日本代表とともに歩んできました。
“one team”はキャプテンが考案したチームスローガン
そもそも“one team”が使われはじめたのは、2016年から。チームスローガンをどうするか。ヘッドコーチに就任したジェイミーに問われた当時のキャプテンだった堀江(翔太)と立川(理道)が考案したんです。実は、トップダウンではなく、こうした選手の自主性にまかせるのが、ジェイミー流なんですよ。
ジェイミーは、日本人の特徴を、チームのために、という思いを強く持つ反面、自主性や積極性に欠けると指摘していました。そこで日本人選手の自主性や積極性を促すために、ミーティングでは、自分が話す前に決まって「君たちから何かあるか」と選手に意見を求めました。「どんなチームを目指すのか」「どんなラグビーをしたいのか」「どのような決まりをチームにつくるか」……。選手がディスカッションする場をもうけて、チームやラグビーについて考える機会も意図的につくりました。