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特集2019年 忘れられない「名言・迷言・珍言」

安倍首相のSNS歴 戦闘的だったフェイスブックからなぜ「イメージ重視」のインスタ、ツイッターへ?

安倍首相のSNS歴 戦闘的だったフェイスブックからなぜ「イメージ重視」のインスタ、ツイッターへ?

「首相は新聞を読まない層を重視している」

2019/12/30
note

「ネットで元気」だった安倍首相

 私は過去に安倍首相についてフェイスブックの利用の仕方に注目していた。以下、2014年に書いたものを拙著から引用する。

《安倍氏はフェイスブックでは、なんかいつもとキャラが違うのだ。2012年秋に『みのもんたの朝ズバッ!』(TBS)でNHKアナの痴漢逮捕事件を報じた時に、誤って安倍氏の顔を映してしまったことがあった。これに対し安倍氏はフェイスブックで怒りを露わにし、その結果、番組側は謝罪した。安倍氏のフェイスブックを見た人たちからの抗議も多かったようだ。「ネガティブキャンペーン」「悪質なサブリミナル効果を使った世論操作」「私は皆さんと共に戦います」......。フェイスブックに投稿された安倍氏の文言を読んでみると、その戦闘的なツッコミモードは「ネットで元気な人」の言いっぷりにそっくりなことがわかる。》(『教養としてのプロレス』)

©iStock.com

《「フェイスブックを使う」という事実は、確かに斬新に見えるが、実は古典的な「どぶ板選挙」と同じかもしれない。田んぼの中に背広で入って握手する田中角栄的な「どぶ板」をネット空間でやっているのだ。コメント欄に熱い声があるところなんか、いわばデジタル版の陳情。今のところ安倍氏はその層を取り込むことに成功している。》(同)

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 そして現在、遂にこのネット戦略は完成に近づいていると言えまいか。

 読売新聞の最近の連載「自民党研究」第1回は「60秒動画 若者に『刺さる』 広報戦略 主戦場はネット」(12月17日)であった。

 しかし。

 情報発信の巧みさはよしとしても、現政権で目立つのは「堂々と議論しない」ことでもある。これすらも戦略だとするとどういう効果を生むか? 「答えない」という手法が日常になると、残るのはふわっとした民意へのアピールだけとなる。

 ここにこそ、政治に対する無関心が生まれると思う。そしてその無関心は政権側には最大の利益なのである。

12月17日、閣議に臨む安倍晋三首相(中央)ら ©時事通信社

「桜を見る会」にはここ数年のさまざまな論点が入っていた。公私混同、公選法抵触疑惑、公文書廃棄問題などキリがない。しかしほぼ説明せず、せっせと好感度営業。

 この巧妙な情報発信は大きな論点とみて、2020年もウオッチしていきたい。

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