心の傷は自分自身でどこまで対処できるのか。心療内科やカウンセリングにかかる前に、自分で試せる心の〈手当て〉――たとえば、大切なものを失った悲しみを手当てするには、「悲しみから意味をつかみとる」ようにする、など――を記した本がヒット中だ。
「メンタルヘルスの本にはエビデンス(根拠)が怪しいものがしばしばあります。著者は臨床心理学の博士号を持っていて、本も学術論文を丁寧に参照して書いている。読みやすさだけでなく、裏付けの確かさもヒットの一因だと感じています」(担当編集者の朝海寛さん)
大ブレイクは著者の『世界一受けたい授業』(日本テレビ系列)出演がきっかけ。しかし、ヒットの兆しはそれ以前にもあった。
「邦訳の刊行直後に、『自己肯定感』に関する章の一部を抜粋して、東洋経済オンラインに載せたんです。ちょうどそのころ、ドラマの『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系列)で、新垣結衣さん演じる主人公が『自己肯定感』という言葉をよく使った影響か、それが思わぬ勢いでバズった(=インターネットで話題になった)。そもそも日本人は自己肯定感の低い人が多いのかもしれません。来日時の著者への取材でも、『孤独』『罪悪感』など様々な症状を扱った本なのに、やはり『自己肯定感』に関する質問が多く、著者も不思議がっていました(笑)」(朝海さん)
心の不調の常備薬として、書棚に備えておいて損のない1冊だ。
2016年9月発売。初版5000部。現在5刷10万部