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その家族は笑うでもなく、怒るでもなく……
「お、おい! 車が後ろに進んでる……どうゆう事や!」
助手席の彼女に向かって必死に叫ぶと、彼女はカッと目を見開き「……大丈夫、ちゃんと前に進んでいるよ」。そう言ってフッと気を失ったのです。
それと同時に車も止まりました。海に落ちるまでほんの数センチ……。本当にギリギリのところだったそうです。
なんとか気を取り直し、エンジンをかけ直すと、幸い車は正常に動きだし、その場から離れる事ができました。
しかし、バックミラーを見ると、先程の家族がすぐそこまで迫っているのが見えたそうです。ただ、その表情は笑うでもなく、怒るでもなく、どこか少し寂しげだったとK君は言います。
後でわかった事ですが、その場所ではかつて、車で海に飛び込んだ一家心中事件があったそうです。それが、K君の体験した出来事と何か関係があるのか。それは誰にもわかりません。