高輪ゲートウェイを冠した店ができていた
しかし、いまのところは寂しい。そこでGoogle Mapで周辺を探してみると、ひとつだけ、駅名を付けた店を見つけた。「コル高輪ゲートウェイホステル カフェ&バー」だ。どんなところだろう。さっそく行ってみた。高輪2丁目交差点から、線路を背にして桂坂を上っていく。信号のある交差点を右折して、すぐ左折。閑静な住宅街。日が暮れて、ちょっと寂しい景色の中に、ほんのりと明るい店がある。
地図にカフェ&バーと書いてあったから、今日の散歩の締めくくりに何か一杯、と思ったら「12月より3カ月間、カフェバーが冬眠に入ります」の貼り紙がある。残念だなあと、窓から覗き込むと誰かいる。図々しく扉を開けてお話を伺った。応対していただいた方は店長の間正観月(ましょう みづき)さん。
「品川新駅を見越して、2018年に『Koru Takanawa Hostel Cafe & Bar』として開業しました。駅名発表と同時に店名を変更して『Koru Takanawa Gateway Hostel Cafe & Bar』にしました。2月いっぱいまでゲストハウスのみ営業です。お客様の8割くらいは外国の方ですね。オーナーの意気込みがすごいので、ぜひ聞いてみてください」
日本でいちばん高輪ゲートウェイ駅に詳しい一般人
後日、オーナーの南祐貴(みなみ ゆうき)氏のお話も伺えた。
大手広告代理店に勤務時代、海外旅行の大自然とゲストハウスの出会いに感動し、脱サラして開業した。「Koru」はニュージーランド先住民のマオリ語で「シダの新芽」。民族が集まる目印だという。新駅開業を見越して物件探し。3年前に築30年以上の店舗物件を1億円以上で購入した。もと鰻屋の改造費用はクラウドファンディングで調達。シダの芽に仲間が集まるように、みんなで作った店だ。
「どんな駅名になろうとも、店名に駅名を入れると決めていました。だから一番先に『Takanawa Gateway』を名づけた店です。2024年に向けた開発についてもかなり調べて、ぼく達は日本でいちばん高輪ゲートウェイ駅に詳しい一般人だと自負しています。JR東日本の高輪ゲートウェイ駅スタッフの皆さんとも仲良しで、お店に飲みに来てくれますよ」
高輪ゲートウェイ駅の開業は3月14日に決まった。
「僕らの勝負の1週間だと思っています。3月1日から冬眠明けのCafe & Barを再開しますよ」
新駅開業にしては周辺の盛り上がりに欠けると思っていたけれど、元気な活動が始まっていた。開業まで、そして開業してから。「泉岳寺駅前」は「高輪ゲートウェイ駅前」へ、少しずつ若いパワーが芽生えていくのかもしれない。
写真=杉山秀樹/文藝春秋