タイトル戦最年少挑戦の記録更新はラストチャンス
さらには、タイトル戦最年少挑戦、奪取の可能性にも期待がかかる。昨年11月に行われた王将戦リーグ最終局で惜しくも敗れ、あと一歩までに迫った挑戦の実現とはならなかったが、同時にここまで勝ち進んだことにより、檜舞台への登場が現実味を帯びているということにもつながる。
最年少挑戦の可能性は、第91期棋聖戦という1棋戦に絞られた。現在は二次予選の決勝まで勝ち進んでおり、ここを制して本戦入りすると、さらに4勝で挑戦権獲得となる。
タイトル最年少奪取は第91期棋聖戦に加えて、第61期王位戦、第68期王座戦、第33期竜王戦の計4棋戦に可能性が残っている。王将戦と同じくリーグ戦で挑戦権を争う王位戦、2期前にはベスト4まで勝ち進んだ王座戦、ランキング戦では未だ無敗の竜王戦と、それぞれ異なる戦場で新星の輝きを見せられるか。
里見と西山の再戦は、秋以降まで待たねばならない
女流棋戦に目を転じると、里見香奈の覇権に西山朋佳が待ったをかけた形となったが、西山は現役奨励会員という立場もあるため、出場可能な棋戦は現在持っている女王(マイナビ女子オープン)、女流王座、女流王将のみである。そして里見も西山との再戦は、もっとも早く実現しても昨年に奪われた女流王将戦あるいは女流王座戦となるので、秋以降まで待たねばならない。
むしろ直近の西山で気になるのは、奨励会三段リーグでの成績だろう。第66回奨励会三段リーグ戦では、8局を消化した時点で6勝2敗の5位と好位置につけている。まだまだ先は長いが、3月7日に行われる最終節の17・18局を上位2名の成績で終えることができれば、歴史的な女性棋士誕生の瞬間となる。
年明けすぐに始まるのは女流名人戦。里見に谷口由紀女流三段が挑戦する。谷口にとっては2016年のマイナビ女子オープン、2016年、2018年の倉敷藤花戦に続く4度目のタイトル挑戦で、悲願の初タイトル奪取を実現できるか。
羽生世代の復権はあるのだろうか
元号は令和の2年目を迎えるが、平成の棋界を引っ張ってきた羽生世代の復権はあるのだろうか。世代を代表する羽生善治は、昨年1度もタイトル戦に出ることがなかった。1989年の第2期竜王戦で初出場を果たして以来、30年ぶりの椿事である。
だが、順位戦ではA級、竜王戦では1組といずれも最高峰のグループに在籍しており、王将戦リーグ、王位戦リーグでは残留を果たした。王位戦では挑戦者決定戦まで勝ち進んだこともあり、まだまだ一線で戦う力はあるといえる。少し年下とはいえ、やはりベテランの域に差し掛かっている、木村一基王位の活躍にも刺激を受けただろう。
何より、多くのファンは「タイトル通算100期」という前人未到の大記録の実現を望んでいる。外野の過大ともいえる期待に対し、常に応えてきたからこそのスーパースターなのだ。ファンが喜ぶその瞬間を、待ちたいと思う。