出演するYouTubeチャンネル『イトシンTV』が、大きな注目を集める伊藤真吾五段は、1982年生まれ。出身地は東京都八王子市である。八王子といえば、羽生善治九段も通った「八王子将棋クラブ」(2018年閉店)の名前を思い浮かべる人も多いだろうが、まさに伊藤さんも、この将棋道場で幼年期から将棋の腕を磨いている。
インタビュー後編となる本稿では、伊藤五段の将棋との関わり始めと、プロ棋士としての歩みから話を聞いていきたい。(全2回の2回目/#1へ)
いつも父親に負けて泣いていました
――将棋を始められたのは、何歳のときですか?
伊藤 5歳のときですね。アマチュア五段の父親から教わりました。
――どんな指導でした?
伊藤 今思うと、スパルタでしたよね。父親は負けることができたはずなのに、全然、負けてくれない。だから、いつも泣いていました。そして、気がついたら八王子将棋クラブに通っていて、そこでも最初は35連敗くらいしたんですよ。
――お父様も一緒に八王子将棋クラブに?
伊藤 父はそこに40年以上通っていたんですよ。それこそ羽生さんが子供の頃に指しているらしいですね。
――プロになろうと思ったのは、いつ頃ですか?
伊藤 小学4年生のときですね。その頃、師匠(桜井昇八段)に入門して。そこは奨励会を目指す人も多く、まず研修会に入りました。そして6年生のとき、11歳で奨励会に入会しています。
14勝を挙げてもプロになれなかった三段リーグ
1993年に奨励会に入会した伊藤さんは、9年かけてプロへの最終関門である「三段リーグ」まで上り詰めた。半年に一度行われるリーグ戦で上位2名の成績を挙げれば晴れて四段(プロ)としてデビューできるのだが、ここからが大変だった。
――少し調べたのですが14勝を2度、13勝を1度という成績で、一度も三段リーグの2位以内に入れなかったのは伊藤さんだけだとか……。
伊藤 三段リーグで14勝すれば、だいたいプロになれるんですよ。14勝1回でプロになれなかった人はいるんですけど、14勝2回でプロになれなかったのは僕だけですよ。まあ、あのときは粒ぞろいで強い人が多かったんですよ。1回目14勝で上がれなかったときは広瀬さん(章人八段)と長岡さん(裕也五段)がいましたし、2回目14勝だったときは、佐藤天彦さん(九段)と戸辺誠さん(七段)がいました。