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特集観る将棋、読む将棋

2020/01/03

タイトルを持ちつつ高勝率を維持するのが、いかに大変か

 そして、王将戦と棋王戦を除く他棋戦では、年度末までにどれほどの対局があるかを考えてみたい。以下は昨年の同時期における該当棋戦と比較しての推測である。

・竜王戦、1組5位決定戦を1局。
・順位戦、残り3局。プレーオフの可能性もあるが、それは渡辺が2敗以上するのが絶対条件なので、勝率記録更新の可能性が低くなり、ここでは除外する。
・叡王戦、挑戦者決定三番勝負までを含めて4~5局。
・王位戦、年明けに予選決勝が1局。リーグ入りを果たせばさらに1~2局。
・王座戦、本戦シードのため、0局。
・棋聖戦、タイトル保持者のため、0局。
・朝日杯、本戦を最大4局。
・銀河戦、パラマストーナメント最上位のため対局がつかず、0局。
・NHK杯、本戦を最大4局。
・JT杯、まだ新規トーナメントが始まらない時期なので0局

将棋の日in甲府での渡辺明三冠(中央右)と永瀬拓矢二冠(中央左) ©相崎修司

 最大で見積もって20局だが、これはトーナメント棋戦をすべて決勝まで勝ち上がるという前提であり、途中で負ければ当然対局数は減る。仮に15勝5敗だったとしよう。そして王将戦と棋王戦の7勝1敗を昨年末までの成績に足すとどうなるか。

 50勝11敗、0.820となり、新記録にはまったく届かなくなる。とはいえこの数字でも、タイトル保持者としての勝率記録は羽生七冠時代の46勝9敗、0.836に次ぐものなのだから、タイトルを持ちつつ高勝率を維持するのが、いかに大変かということの表れである。

 渡辺が年度末までに50勝したとしても、負け数を8敗以内に抑えなければ記録更新とはならない(50勝8敗だと0.862で更新だが、50勝9敗だと0.847で新記録には届かない)。ここからの3ヵ月で3敗しかできないというのはとてつもなく高いハードルであるといえよう。

 また、タイトル獲得通算23期という実績を持つ渡辺だが、これまで名人戦では挑戦者になったことすらなかった。ところが今期はここまでA級順位戦で6勝0敗と独走状態に入っており、4月に行われる名人戦七番勝負への登場が濃厚になっている。記録達成がかかる年度末には、名人への挑戦権にも同時に注目が集まるだろう。

藤井七段は前人未踏の朝日杯3連覇なるか

昨年は強豪を連破して朝日杯将棋オープン戦2連覇を果たした藤井聡太七段 ©文藝春秋

 高勝率といえば2017、2018年度に連続して勝率8割を達成した藤井聡太だ。今期は年末の時点で34勝10敗の0.772とさすがに数字を落としているが、以前にもまして強敵と戦う機会が増えたので、これは致し方ないところだろう。

 まずは間もなく決勝トーナメントが始まる朝日杯将棋オープン戦にて、羽生善治九段(2013~2015年度)以来の3連覇を実現できるかという点に注目が集まりそうだ。