なぜ人は勉強するのか? 勉強嫌いな人が勉強に取り組むにはどうすべきなのか? 思想界をリードする気鋭の哲学者が、独学で勉強するための方法論を追究した『勉強の哲学 来たるべきバカのために』が、ジャンルを超えて異例の売れ行きを示している。近寄りがたい「哲学」で、難しそうな「勉強」を解いた先に広がる世界とは? 本書の読みどころを6日間連続で特別公開します。 

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『勉強の哲学 来たるべきバカのために』(千葉雅也 著) 

はじめに

 この本は、勉強が気になっているすべての人に向けて書かれています。

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 英語を勉強してもっと海外に行きたいとか、経済や文化に詳しくなって企画を考えるのに活かしたいとか、定年が間近に迫り、哲学や宗教を学び直してみたいとか、勉強と一口に言ってもさまざまなニーズがあるでしょう。そこで、この本では、もうちょっと「深く」勉強してみることへとお誘いしたいのです。根本的に、「勉強とはどういうことか?」を考えてみませんか。

 

 軽い気持ちの勉強のつもりで、実は、明日からの自分をもっと変えてみたいと考えているのかもしれない。変身するような勉強を、心のどこかで求めているのかもしれない。

 

 それにしても今日ほど、勉強するのに良い時代はないんじゃないかと思うのです。 

 何か気になったら、すぐインターネットで検索して、学び始めることができる。

 ネットの記事は、ウィキペディアなども含めて、情報の信頼性を疑ってかかる必要がありますが、その一方で、公式の統計資料や、査読(専門家による内容の審査)された論文など、信頼性が担保されたものも多くあり、そういうものならば、本格的な勉強の材料になります。

 

 また今日では、良い入門書がたくさん出版されています。

 第一線の専門家が、ひじょうにわかりやすく解説を書いてくれるようになった。ネットの記事でも、紙の本でも、現代ではとにかく読みやすさが工夫されています。

 昔の本は、入門書だとしても、いまほど親切ではありませんでした。

 いまでは、最初の一歩として読みやすいものから始め、それから難しいもの、昔のものにチャレンジするというふうに、段階を踏んで勉強を進められるようになっています。