文春オンライン

ニュース配信戦争勃発! 「ヤフーニュース独り勝ち」でネットメディアはどこへ向かうのか

コンテンツ業界のエコシステムについて

2020/01/09
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開示されるべきは「基準」と「根拠」

 調査報道としてカネがかかった記事だから偉いのか、現地報道で身を削ったカメラマンが撮影した記事だから凄いのか、あるいは、お手軽に記者会見を見物に行って仕上げた芸能人の色恋沙汰の記事が望まれるのか、この辺は限られたトップの中でどれだけ多くの人が満足してそのサービスを使い続けてくれるかという競争があるのだとするならば、なるだけ、その競争の内容は明示してくれよと思います。

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 石戸諭さんがYahoo! JAPANに取材して応対した人たちが、ごく当然の風情でヤフートピックス編集の様子を露わにしていて、いや、開示されるべきことはどんな優秀な若者がその担当をしているのかではなく、Yahoo! JAPANはその影響力(権力)をどのように行使し、何を目指すなかで、毎日何千本と各社から配信されてくる記事から珠玉の数十本を選び出してアクセスを流し込もうとしているのかという基準と根拠です。

こんな良質な記事がタイムリーに出ていたのに……

 例えば、映像作家でジャーナリストの岸田浩和さんが香港デモ(動乱)のドキュメンタリーを現地にいるViola Kamさんと取材してまとめた凄い記事が出ているのですが、ヤフーニュース「国際」でトップを飾った他の香港系の記事はまったくテーマの異なるものでした。限られたスペースで、取り上げられる記事数もそう多くない以上、どうしてもそこには掲載するYahoo! JAPAN側の「恣意」「判断」が働くのは仕方のないことですが、目を通していて「えっ、こんな良質な記事がタイムリーに出ていたのに、なぜトピックスのような人目のつくところでピックアップされなかったのだろう?」という気持ちにすらなります。

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「自分に何ができるか」飛び交う催涙弾と火炎瓶……香港デモ密着ルポ 若者たちの胸中
https://news.yahoo.co.jp/feature/1529

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 そして、そういう思いはコンテンツに携わる側、各分野でその問題を詳しく知る側からすれば、ほぼ毎日と言っていいほど、各メディアに対して抱く感想になります。新聞紙の1面しかりヤフーニュースのトップしかり、限られたスペースだからこそ、媒体を信頼して読みにきているたくさんの読者と、そこに記事を配信できることを願う記事の書き手との間を取り持つデジタル・プラットフォーム事業者に「もう少し、どういう基準で記事を掲載しているのか、ちゃんと説明しておくんなまし」と思ってしまう瞬間なわけです。