1970年作品(88分)/東宝/4500円(税抜)

 二〇一九年は、年初から洋画の連載をもつようになり、一年を通して新旧の海外映画を数多く観ることができた。

 そこで気づいたのは、世界的にアクション映画がまだまだ作られ続けていることだ。しかも超大作だけでなく、中・低予算でピリッとアイデアを利かせた作品も少なからずあって、かなり楽しませてもらうことができた。

 それで考えると、日本のアクションは本当に壊滅的な状況だと改めて思い知らされる。一部の超低予算作品を除き、活劇的な作品は本当に少ない。

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 そんな日本映画において、アクション映画が盛り上がりを見せた時期があった。それが一九七〇年前後。現代劇も時代劇も、荒々しくてハードボイルドな作品を各社ともに製作していたのだ。

 中でも、後に名画座やDVDで観た際に夢中にさせてくれたのが、この時期の東宝作品だ。加山雄三が青春スターのイメージから脱却、寡黙なスナイパーを演じた『狙撃』『弾痕』『豹(ジャガー)は走った』といった一連の作品が代表的だが、とにかく渋味の効いたアクションに惚れ惚れとした。

 今回取り上げる『野獣都市』も、そんな時期の一本だ。

 鉄砲店で働く大学生・有間(黒沢年雄)は猟友の会社社長・石浜(三國連太郎)から銃と運転の腕を見込まれ、彼の下で私的に働くことになる。そして、石浜に惚れ込んだ有間は、石浜のためにダーティワークに手を染めていく。

 序盤から素晴らしい。大量のゴミが散乱する夢の島の荒涼たる景色をバックに、的確な射撃で刺客を倒していく有間。最高にカッコいい画だ。

 演じる俳優陣もいい。

 内に昂る感情を秘める黒沢、怪しげな厭らしさを醸し出すミステリアスな三國。このクールさが画面に緊迫感を生み出す。それだけでなく、双方の言葉の裏側には互いへの愛情が感じられ、二人を不思議な温かみが包んでいた。そのため、観る側はこの二人の一挙一動に夢中になる。

 対する悪役を演じるのも小松方正、大滝秀治、青木義朗、草野大悟、清水将夫とクセ者揃いで、相手に不足なし。そんな両者の戦いなのだから、それはもう盛り上がる。ただ、その盛り上がりもあくまでクール。淡々としたテンションの中でジワリと上がっていく。

 それがやがて、終盤に爆発する。娘を救うため敵に捕らわれた石浜は無残な姿に変り果てる。初めて感情を荒らげる有間。それまでのクールさがあったからこそ、感情の苦しさが胸を打つ。そして、それを経て迎えるクライマックスのアクション。たまらない。

 巧みな演出と役者の演技でこれだけのアクション映画が作れる。邦画、がんばれ。