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誤解だらけのイラン問題 ウクライナ旅客機を撃墜した「革命防衛隊」の正体

2020/01/13

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, 社会, 国際

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ロウハニ大統領には一切、軍の指揮権はない

 報道ではしばしば「革命防衛隊は国軍とは違い、ハメネイ最高指導者の直属の部隊だ」と解説されています。しかし、それは誤解を呼ぶ解説です。それだと「ロウハニ大統領は国軍を指揮するが、革命防衛隊は最高指導者の統帥権を盾に、イラン政府の意向に従わずに勝手に独自で動く」といった勘違いをされてしまいます。実のところは、指揮系統的には両軍は同格なのです。

ロウハニ大統領(2020年1月8日) ©AFLO

 イランでは国軍も革命防衛隊も、政府(大統領)の下にはありません。どちらも最高司令官はハメネイ最高指導者で、指揮系統にロウハニ大統領はいないのです。イランの軍事組織の指揮系統は以下のとおりです。

 まず、最高司令官はハメネイ最高指導者です。しかし、最高指導者はすべての問題を自分で判断しているわけではなく、側近の助言に頼ります。その側近組織が「最高指導者室」。最高指導者室はいわゆる官房組織で、その中に、安全保障政策・対外戦略を統括する「最高指導者軍事室」があります。現在、その室長はムハマド・シラジ准将が務めています。そして、最高指導者軍事室の下に、「イラン・イスラム共和国軍総参謀部」が配置され、その統括者として「イラン・イスラム共和国軍総参謀長」がいます。現在、モハマド・バケリ少将がその任にありますが、この役職が、イランの軍部の制度的なトップになります。

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ハメネイ最高指導者(2020年1月8日) ©AFLO

 そして、そのイラン・イスラム共和国総参謀部/総参謀長の統括下に「国軍」「イスラム革命防衛隊」「警察治安部隊」が置かれています。つまり、イランのすべての国家暴力装置がイラン・イスラム共和国軍総参謀長、最高指導者軍事室を通じて最高司令官のハメネイ最高指導者に繋がるという指揮系統になっているのです。しかし、実際には革命防衛隊のステータスは国軍よりもずっと高いものです。それは革命防衛隊の成り立ちに関係があります。