1月11日、海上自衛隊の哨戒機2機がアフリカ北東部にあるジブチ共和国に向かって出発しました。すでに同地を拠点にソマリア海賊監視任務に就いている2機との交代のためですが、今度の部隊からは活動エリアが北アラビア海やオマーン湾に拡大されます。いわゆる中東派遣の第1陣となるわけです。

 今後、2月2日には護衛艦1隻が同じく出航します。これらの部隊は中東海域で、日本関連船舶の安全確保のための情報収集活動を行うことになります。結局、米国側から求められていた有志連合には加わらず、ホルムズ海峡やペルシャ湾といった危険地域にも近づきませんが、見方によってはイランへの敵対的行為とも受け取れます。

海上自衛隊に中東派遣命令を出した河野防衛相(2020年1月10日) ©AFLO

 そこで日本政府は、イラン政府の機嫌を損ねる可能性を気にしています。日本は資源戦略の延長で、かねてから西側主要国では最もイランと良好な関係を維持してきました。つい先般も、2019年12月20日にロウハニ大統領が来日し、安倍首相と会見しています。日本側の最大の狙いは、今後中東に自衛隊を派遣することの理解を求めること。つまり「自衛隊を攻撃しないでください」とのお願いです。

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来日したロウハニ大統領と安倍首相(2019年12月20日) ©AFLO

 しかしイラン側で、たとえば2019年6月にホルムズ海峡で発生した、日本とノルウェーの海運会社が運航するタンカーへの攻撃のような工作を担うのは革命防衛隊です。「誤解だらけのイラン問題 ウクライナ旅客機を撃墜した「革命防衛隊」の正体」でも述べたように、ロウハニ大統領には革命防衛隊の活動に口を出す権限はありません。革命防衛隊を指導できるのは、唯一、最高司令官である現在80歳のハメネイ最高指導者だけです。なので、安倍首相がロウハニ大統領に会うだけでは、それほど効果は期待できません。