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権力の中枢で権勢を振るう「軍部=イスラム保守派」

 同評議会でハメネイ最高指導者の意思を代弁するのが、最高指導者代理であるシャムカーニ書記とジャリリ前書記。さらにハメネイ最高指導者が指名したバケリイラン・イスラム共和国軍総参謀長、サラミ革命防衛隊司令官、ムサヴィ国軍司令官、ライシ司法長官らは、いずれも対米強硬派です。彼らは個人的に突出した存在というより、イランの軍部とイスラム保守派勢力の代表のような存在です。いずれにせよイランの権力中枢では、とくに軍部の発言力が強くなっています。

サイード・ジャリリ前書記(2013年5月29日) ©AFLO

 というより、軍部=イスラム保守派は、1979年のイスラム革命以降、40年にわたってイスラム革命の大義を叫ぶことで、イラン国内で権力を維持してきた層なのです。そして、その層こそが、ハメネイ最高指導者に大きな影響力を持っており、イランの安全保障政策・対外戦略を仕切っています。つまり、イランでは構造的に対米強硬論が揺るぎない仕組みになっているわけで、そこはロウハニ大統領にも手を出せないのです。もっともロウハニ大統領自身、1989年から2005年まで16年間も最高国家安全保障評議会書記を、また同時に計13年(89~97年、2000~2005年)も国家安全保障担当大統領顧問を務めていた人物なので、対外戦略の素人ではありません。

今年1月3日に殺害されたソレイマニ司令官

 また、最高国家安全保障評議会の12人のメンバー以外にも、イランの安全保障・対外戦略に大きな影響力を持っている人物がいます。その筆頭がハメネイ最高指導者の外交顧問であるアリ・ヴェラヤチ元外相と、先日殺害された革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官です。いずれもハメネイ側近といえる人物です。他にもハメネイ最高指導者の軍事顧問を務める革命防衛隊最高幹部が何人かいます。

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 こうしたイランの意思決定の仕組みを知っておかないと、イランの対外政策を分析するのは困難です。ロウハニ大統領やザリフ外相はいわば対外スポークスマンであって、国際社会でイランが孤立しないための表向きの外交を担当しているにすぎません。彼らの言動だけ追っていても、イランの考えはわからないわけです。