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いまこそ知っておきたい「親日だけど問題国家イラン」をめぐる国際政治のウラとオモテ

2020/01/13

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, 政治, 社会, 国際

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ロウハニ大統領は「使い走り」

 イランには最高指導者と大統領がいて、そこがまたイラン問題をわかりにくくしています。ロウハニ大統領は対外スポークスマン的な役目を負っていて、オモテの外交を担当しますが、イランという国の安全保障政策や対外戦略には決定権がありません。いわばハメネイ最高指導者の「使い走り」のようなものです。

 イランという国家の体制では、最高指導者が国家元首だと規定されています。大統領は国民の選挙で選ばれますが、イランでは大統領候補も国会議員候補も、「監督者評議会」の審査・認証が必要です。この監督者評議会は12人のメンバーから構成されますが、半分の6人を最高指導者が指名します。残り6人は国会で選出されますが、国会でも最高指導者の影響力は強く、結局は事実上、ハメネイ最高指導者が承認しなければ大統領になることはできません。

ハメネイ最高指導者 ©AFLO

 つまり、ロウハニ大統領ならずとも、イランの大統領はハメネイ最高指導者の意思に逆らうことはできないわけです。ちなみに、最高指導者は「専門家会議」で選出され、罷免され得る規定ですが、同会議の議員はすべてイスラム法学者であり、立候補には監督者評議会の承認が必要なので、実際には最高指導者は事実上終身制となっています。

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 ただし、これは今の話であって、たとえば1989年以降の8年間は、ホメイニ門下生でイスラム革命初期からの重鎮でもあるハシェミ・ラフサンジャニが大統領職にあり、ハメネイ最高指導者よりも、むしろイラン政界での存在感が大きかった時代でした。しかし、1997年にラフサンジャニが大統領職を退くと、ハメネイ最高指導者の存在感が相対的に大きくなり、それ以降の大統領に対してはハメネイ最高指導者が優位に立つ構図が続いています。