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最も重要な意思決定機関は「最高国家安全保障評議会」

 大統領は国内政治に関して、最高指導者の意向の範囲内で統治権限を与えられていますが、安全保障政策・対外戦略の分野ではほとんど決定権はありません。その分野では、最も重要な意思決定機関は「最高国家安全保障評議会」です。そこで決定し、最終的には最高指導者が承認するという手順になっています。

 この最高国家安全保障評議会は、通常は大統領を含む12人のメンバーから構成され、大統領が議長を務めますが、実質的に協議をリードするのは「書記」(事務局長)です。この書記は形式的に大統領が指名しますが、実際には最高指導者が正式に「最高指導者代理」として送り込んでいます。最高指導者はメンバーではありませんが、こうして同評議会に絶対的な影響力を持っています。

 現在の12人のメンバーは次のとおりです。大統領と国会議長は役職から自動的に資格を得ますが、それ以外の10人については、4人は大統領が指名する閣僚で、6人は最高指導者が指名する軍人およびイスラム保守派代表になっています。

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アリ・ラリジャニ国会議長(2019年12月1日)

安全保障政策・対外戦略の決定権を持つ12人

▽ハッサン・ロウハニ大統領(元最高国家安全保障評議会書記)
▽アリ・ラリジャニ国会議長(革命防衛隊出身。元最高国家安全保障評議会書記)
▽アリ・シャムカーニ少将(書記兼最高指導者代理。元革命防衛隊海軍司令官)
▽サイード・ジャリリ(最高指導者代理・前最高国家安全保障評議会書記。革命防衛隊民兵「バシジ」出身。元外務次官)
▽モハマド・バケリ少将(イラン・イスラム共和国軍総参謀長。学生時代に米国大使館占拠に参加)
▽ホセイン・サラミ少将(革命防衛隊司令官)
▽セイード・ムサヴィ少将(国軍司令官)
▽イブラヒム・ライシ司法長官(元検事総長。イスラム保守派の高位イスラム法学者)
▽モハマド・ザリフ外相(元国連大使。対外スポークスマン)
▽アブドルレザ・ファズリ内相(ラリジャニ国会議長の側近。警察機構を統括)
▽マフムード・アラヴィ情報相(元国軍政治局長。高位イスラム法学者で革命防衛隊と近い。宣伝謀略工作を担当)
▽モハマド・ノバハト管理計画庁長官(ロウハニ大統領の側近)

ハメネイ最高指導者が送り込む代理、アリ・シャムカーニ少将(2019年7月10日) ©AFLO

 見てわかる通り、多くが軍関係者です。イラン政府の安全保障政策・対外戦略は、これらのメンバーによる評議会で決定し、ハメネイ最高指導者の承認を受けるという流れです。しかし現在のロウハニ大統領とハメネイ最高指導者の力関係は圧倒的にハメネイ優位なので、実際にはハメネイ最高指導者の意思をロウハニ大統領および政府に指示する場になっています。