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【オリックス】復調への鍵を音楽にたとえて考察してみると……

文春野球コラム ペナントレース2017

2017/05/21

復調への鍵は短く細かい音符にあり?

「全音符」は1小節全て伸ばす長さで、4分の4拍子なら「四分音符」の4倍。「二分音符」はその半分の長さで、「四分音符」の2倍。「四分音符」はいわゆる1拍の長さ。4分の4拍子ならこの「四分音符」4個で1小節。「八分音符」なら8個で1小節(「四分音符」の半分の長さ)、「十六分音符」なら16個で1小節(「八分音符」の半分の長さ)。

 冒頭から暗号のようだが、我々音楽家はこのルールの下、楽曲を演奏している。特にバンドアンサンブルにおいては、拍子により小節の受け皿容量が決まり、BPMにより音符の長さが決まる。決まった長さの音符を決まった容量で配置しながら共通のルールの下、共通の楽曲を演奏するのである。ちなみにORIX球団歌「SKY」のイントロでギターやベースが鳴らしているのは「全音符」である。

©MEGASTOPPER DOMI

「何故野球コラムに音符の長さが?」と違和感を覚える方も多いかもしれないが、もう少しお付き合い頂きたい。

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 実は我々音楽家はアンサンブルの途中で頻繁に他メンバーとの演奏の「ズレ」に遭遇してる。勿論、その都度細かい修正を行いながら演奏を続けるのだが、この時に修正の基準とし易いのが「八分音符」や「十六分音符」といった短く細かい音符なのである。何故なら、長い音符であれば自身と他メンバーの音符のイメージの相違も長く(大きく)なるが、短い音符であれば相違も短く(小さく)なるからである。

 かなり長い前置きとなったが、5月に入ってからのBsの打撃の不調。復調への鍵はこの短く細かい音符にあるのではないかと考える。

「143小節」の楽曲

 長いレギュラーシーズン。この1シーズンを音楽でいう「1曲」と考えて欲しい。この「1曲」は143試合、つまり「143小節」の楽曲とする。平均的に1試合あたり4打席の打席に立つので「1小節(1試合)」は「4拍」、つまり1打席が「1拍」となり、おおよそこの「1拍(1打席)」が「四分音符」1個分の長さとなる。

 2016シーズンの投手の打者1人あたりへの平均投球数を見てみると、一番少ない投球数の井納翔一(DeNA)で約3.7球。一番多い若松駿太(中日)で4.2球。おおよそ一打席あたり約4球となるので、先ほどの音符に置き換えると1打席に対しての1球は「四分音符」の4分の1の長さ、つまり「十六分音符」1個分の長さとなる。

 よく耳にする「今日の試合では良い所が無かった、また明日仕切り直し」という言葉、これは言うなれば「1小節ほとんどズレてしまったから、次の1小節で修正しよう」となり、「先ほどの打席ではスライダーに翻弄されたので、この打席でうまくスライダーに照準を絞れた」は「四分音符1個分ズレてしまったから次の四分音符1個で修正した」となるのではないだろうか。「初球のカーブでうまくかわされてしまったので、2球目はしっかり踏み込んだ」。これは「十六分音符」1個分の長さでうまく調整した事になる。
 
 極端な話、ワンカード丸々不調、言わば3小節もしっくりこない演奏を披露したとなると、恐らくそのバンドは「下手くそ」のイメージを持たれてしまうだろう。「全音符」(4打席=1試合)や「二分音符」(2打席=後半の4イニング)で修正を試みる事は、例えるなら「ズレを長い音符で調整に行く行為」に思えてしまう。結果として長い小節を調整に費やす事になり兼ねず、ややリスキーだと思うのだ。

 せめて四分音符(1打席)より短い音符で毎回修正に取り掛かる方が、大きなズレを防げるという意味では安全だと思うのである。

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