[ロンドン発]イギリスの欧州連合(EU)離脱(BREXIT)にちなみ、「MEGXIT」と呼ばれるヘンリー王子(35)と元米女優メーガン妃(38)の“王室離脱”問題。英中東部サンドリンガムの別邸で行われた緊急の家族会議を受け、18日、エリザベス女王の声明と最終決定が発表された。

 2人は今年春には王室の称号(His or Her Royal Highness)を返上し、公務から完全に離脱する。サセックス公爵とサセックス公爵夫人の爵位はそのまま維持する。

2018年6月、エリザベス女王、ヘンリー王子、メーガン妃 ©AP/AFLO

 突然の“王室離脱”宣言からわずか10日のスピード解決となったが、「サセックスロイヤル」を使ったブランドビジネスを巡る火種はくすぶっている。

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 18日に発表されたエリザベス女王とバッキンガム宮殿の声明からポイントを見ていこう。

「2人はもう王室のメンバーではない」

(1)メーガン妃とヘンリー王子が王室の称号を継続して使用することは認められるのか?

「2人はもう王室のメンバーではないので、王室の称号は使わない」(バッキンガム宮殿)

 13日の家族会議のあとの声明でエリザベス女王がサセックス公爵やサセックス公爵夫人という王室の称号ではなく「ハリー(ヘンリー王子の愛称)とメーガン」とファーストネームで呼んだことから、2人が称号をあきらめるという観測が王室ウォッチャーから流れていた。

 その一方で1996年に離婚したダイアナ元妃から称号を取り上げて放り出す形になり、厳しい世間の批判にさらされた記憶がエリザベス女王には残り、同じ過ちは繰り返すまいと心に決めている。

 ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校のポーリーン・マクララン教授(マーケティング)は筆者に「エリザベス女王が王室の称号を剥奪すれば、多くのメーガン妃とヘンリー王子サポーターは2人を殉教者とみなし、王室ブランドは傷つく」と語り、厳しい条件付きだが称号使用は認められると予測していた。

 しかし、王室の判断は称号の使用を認めないという極めて厳しいものになった。

(2)メーガン妃とヘンリー王子は今後も公務を担当するのか?

「軍の公式行事を含めて王室の公務から離れることを求められるということを2人は理解している」(バッキンガム宮殿)

2019年7月、映画「ライオン・キング」欧州プレミアにヘンリー王子夫妻が出席 ©ロイター/AFLO

「将来もキングとクイーンが残っているのはトランプの札と英王室だけ」と言われるのは、英王室が議会の監視にさらされ浪費を慎み、イギリスや英連邦の国民のために尽くしてきたからだ。

 エリザベス女王は93歳という高齢にもかかわらず、週1度、首相と会い、全ての政府文書と新聞に目を通す。送られてきた手紙も自分で読んで返事を書く。

 ダブル不倫、離婚、ダイアナ元妃の交通事故死で不人気のチャールズ皇太子もコーンウォール公爵領の農家が上手くいっているか、こまめに足を運んで、その声に耳を傾けアドバイスしている。

「民のかまどから煙が上っているか」手分けして目配りしているのがロイヤルファミリーだ。年間、国内外の公務は2000回、公式の晩餐会・昼食会・レセプション・園遊会で接待する人は7万人、受信・返信した手紙の数は10万通にのぼる。