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「生きるって自己決定だと思う」アイヌの人々を描いた直木賞受賞作・『熱源』川越宗一さんインタビュー

第2作で異例の受賞

2020/01/18
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――作中の女性の多くは架空の人物ですが、みんな魅力的ですよね。また、チュフサンマという女性が自分の顔にアイヌの入墨を彫る決意をするなど、女性が自己決定する場面もあります。女性を書く際に、なにか意識しましたか。 

川越 明確に意識はしなかったんですけれども。そもそも歴史的な資料で残っているのは男の話ばかりなんですよね。女性が出てきたとしても、英雄の奥さんとか、英雄をたぶらかした悪女が多い。でも人類の半分はいうたら女性なので、当時は男性中心で動いていた世界としても、世界の半分しか書いていない気がするんです。それに対する反感みたいなものはふんわりとありました。その反動が、『熱源』に出てくる女性の人数や行動になっている気がします。

 ただ、自分は男なので、やっぱり女性が書けているかどうかすごく不安なんです。なんか気持ち悪い感じになってへんか、とか。 

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――そもそもなんですが、小さい頃から歴史が好きだったそうですね。 

川越 歴史は物心ついた頃から好きでした。ちょうど子どもの頃に大河ドラマで「独眼竜政宗」をやっていたので、戦国武将とかも好きだったんです。けれど、大人になってくると、一見格好よくないけれど光っている人とか、よく考えたら格好いいとか面白いとか、そういう人のほうに興味が移っていきました。  

大学の4回生で、取れていたのは20単位 

――大学は史学科に進まれたわけですが、途中で退学していますよね。 

川越 最初のほうでもう早々に授業に行かなくなりました。モラトリアムを十二分に満喫しようと思ったのか、とにかく頑張るということを一切しなかったです。大学の4回生が終わる時に120単位必要なんですけれど、20単位ちょっとしかなかった。と、喋りながら自分のことをなんて奴だと思っています(苦笑)。その時にちゃんと勉強していたら、今もっと楽に書けた気がします。 

 

――その後はバンド活動をされていたとか。ロックですか。 

川越 ロックです。バンドは高校1年の時から始めていました。大学をやめて、カラオケ屋さんで1年くらい働いていた時期はバンド活動もやめていたんですけれど、昔の仲間が「また一緒にやろうぜ」と言ってきたので、カラオケ屋さんをやめてバンドを始めました。

 活動しながら見つけた仕事があって、契約社員にしてもらい、30歳になった時にみんなそろそろバンドしてられなくなったので活動をやめて、その会社に相談して正社員にしてもらったという経緯です。 

――今もお勤めされているのですか。この先兼業でやっていくのでしょうか。 

川越 そうですね。でも小説を書くようになってから、時短勤務にしてもらっています。働きやすい会社で、感謝しています。