NHKは4月1日から、放送のネット同時配信と見逃し配信を実現する新サービス「NHKプラス」を開始すると発表した。利用対象者は、NHKの放送受信契約者。追加料金は発生せず、無料で利用可能だ。

 このサービスの開始までには、2019年末、総務省との間で若干の「さや当て」があり、多少の方向修正を経て実現された、という経緯がある。

 NHKプラスは無料で提供されるサービスであるにも関わらず、「NHKはネット利用者全員から料金を徴収しようとしている。NHKプラスはその布石だ」との声も聞かれる。しかし、これは少なくとも現状、まったくの間違いだ。

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 なぜサービス開始までに、総務省とNHKの間では「意見の相違」が生まれたのか? また、無料サービスであるNHKプラスがなぜ「NHK・ネット課金の布石」と誤解されるのか? その理由を解説しよう。

 なお、解説する前に、前提条件を提示しておきたい。本記事では、NHKの報道姿勢や放送内容については一切触れない。また、NHKの受信料徴収が時に高圧的・強権的であることも問題ではあるが、今回の件とは直接関係ない。それらは確かにNHKのガバナンスの上で大きな問題ではあるが、今回の「放送とネットの関係」には直接かかわりがない。まず「それはそれ、これはこれ」で議論をしないと理解が進まない。

NHKプラスは「放送の付帯サービス」

 今回の「NHKプラス」は、2019年5月29日に成立した「改正放送法」を根拠として提供されるものだ。NHKプラスには、PCやスマートフォンからアクセスできる。南関東エリア(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県)の放送が全国からネット経由で視聴可能になる。放送と同時にリアルタイム視聴が可能なほか、放送終了時刻から起算して7日間、番組の「見逃し配信」も提供される。利用料金は無料。