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2020/01/18

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, テクノロジー, メディア, 社会, 政治

 より根深いのは「ネットからの全量徴収の布石」という批判だ。

 これには、確かに根拠がないわけではない。NHK受信料制度等検討委員会は、2017年、ネットでの同時再配信時の受信料について、「テレビがなく、ネットのみで番組を視聴する世帯からの受信料徴収には一定の合理性がある」とのコメントを出している。その場合、テレビを持たず、ネットだけを使っている層からも受信料徴収を……ということになる可能性はあった。

昨年11月、NHKが認可申請したネット業務の実施基準案の再検討を要請した高市早苗総務大臣 ©AFLO

 だが実際には、現状、そうした方向性での議論にはなっていない。なぜなら、「テレビという放送受信専用機器」を持っている人から受信料を徴収することと、「PCやスマートフォン」という、映像配信を見るかどうかもわからない、アプリのインストールなども利用者の自発性がなければ生まれない機器について、強制的に徴収の対象とすることは大きく違うからだ。

 また、全世帯徴収を行う根拠の提示、全世帯徴収による影響の精査もできていない。仮に徴収することになると、「PCやスマホを持つ人全員から常に徴収できる」環境を整える責務も生まれてしまう。ネットは混雑に弱く、放送のように「全国民が同時に見る可能性がある」形の使い方にはコストがかかる。

 それに、今のNHKプラスに少額の受信料を流用することに「民業圧迫」と反応して大臣に持ち込む民放が、ネットからの強制徴収のような制度が出てくるときに黙っているはずがない。

危険性だけをあげつらっていいのか

 これらの議論はまったく深まっておらず、「公共放送でテレビをもっていない人から受信料をとる」ような仕組みは、諸外国にもない。やるならば、「国営放送」にして税金として徴収するしかない。だが、NHKは「公共放送」であることを重視しており、国営放送にはなりたくない。「こうした根の深い問題に突っ込むくらいであれば、あくまで放送の付帯サービスと割り切って展開するのが実現の近道」とNHKは考えているのだ。

 懸念は懸念で危惧する必要があるが、相応に大きな法改正が必須である以上、いきなり後戻りできない形で提示されることはない。これらの事情を無視して危険性だけをあげつらうのは、諸外国に対する遅れをカバーする意味で大きなブレーキになる。

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