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2020/01/18

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, テクノロジー, メディア, 社会, 政治

 そのことに対する違和感は、日本人の中でも、東日本大震災以降大きくなっていった。災害時にスマホからテレビのニュース速報を見られるのが当たり前になってみると、「この手元の液晶画面で、なんでテレビ番組は見られないんだろう?」という疑問が出てくるのは当然だ。そのうち、若年層はテレビを見る時間よりYouTubeなどのネット動画を見る時間のほうが増えていく。

ネット同時配信などについて記者会見するNHKの上田良一会長(1月15日) ©時事通信社

 日本のテレビ局もなにもしていないわけではない。NHKが「NHKオンデマンド」をスタートしたのは2008年。世界的にもそう遅いスタートではなかった。その後、2015年に民放が見逃し配信サービス「TVer」をスタート、利用者を順調に伸ばしている。

 NHKが今回、NHKプラスをスタートするのは、最後に残った「放送との同時再配信」というピースを埋めるためである。テレビの前にいないときでも、スマホやPCを使ってNHKの番組を見られるようになるわけで、基本的には消費者にとってはプラスといえる。

ネットへの強制課金、現時点では杞憂

 だが、冒頭で述べたように、実現までには相当に時間がかかり、総務省からも「待った」がかかった。一部の消費者からは「ネット利用者全員からNHKが受信料をとる布石だ」と非難されている。

 どちらも問題の根幹は、NHKの特殊性にある。

 総務省が待ったをかけた理由は、民放からの陳情だった。NHKという、受信料収入を広く集められる特別な立場の事業者が、その受信料収入をネット事業に使うことが「民業圧迫にあたる」と非難されたためだ。

 過去には、NHKオンデマンドがスタートするときに、「無料だったり受信料収入を使ったりするのは民業圧迫である」と指摘されていた。そのため当時は、「仕事に使う鉛筆1本の予算まで、放送事業とは分割する」という厳しいルールをNHKに課すことになった。今回も、ネット事業に使える費用を明確にし、他事業者と協議する、との条件が付帯されている。

 正直、「そこでNHKにブレーキを踏ませるより、自分たちがサービスを改善することに力を尽くしたほうがいいのでは」と筆者は思うが、民放の懸念に妥当性がないわけでもない。

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