ここまで好調をキープしていたNHKの朝ドラ『スカーレット』だが、年が明けた一月の第二週で視聴率が大きくダウンした。

 早速“犯人探し”が始まり、週の半ばから新キャストで登場した松永三津を演じる黒島結菜に疑惑の目が向けられた。

 ヒロイン喜美子(戸田恵梨香)と夫の八郎(松下洸平)が築きあげてきた平穏な家庭に、いきなり尊敬する八郎の弟子になりたいと押しかけ、夫婦の間がギクシャクし始め、視聴者が離れたのではないか、と。

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 このところ朝ドラとは、とんと無縁だった私だが、ネットに「黒島結菜は疫病神!?」なんて文字が躍るのを見ると、よし、自分の目で確かめてやろうじゃないかという気になった。

「スカーレット」のラッピング列車の運行が始まり、出発式に登場した主演の戸田恵梨香 ©共同通信社

 三津は美術大学を卒業後に、全国の陶芸工房を旅して巡った末に喜美子たちの“かわはら工房”に弟子入りした。バンダナを巻いた髪と、カラフルな衣装は絵に描いたヒッピーだ。

 舞台は一九六九年、美術家の卵ならこのファッションでしょ。そう制作サイドは判断したのかな。ラブ&ピースなら、これだと。

 あくまで明るく前向きな性格の三津は、思い浮かんだアイデアや感想を臆することなく口にする。このキャラが“新しい風”を吹き込むかと喜美子も弟子入りを許した。ところが、八郎は裏表ない三津のストレートな物言いにすっかり心を許し、喜美子を相手では喋らないこともペラペラ。

 これじゃ、気の強い喜美子さんのことだから、内心のモヤモヤーが顔に出て、日に何回かは天然な三津の言葉にムカッとなり、戸田恵梨香の眉間に、怖くて深いシワが一瞬刻まれる。

 三津が何の邪心も無いナイーブな娘と判っているから、なお一層のこと喜美子の心は屈折していく。

 や、やばいなあ。これじゃ、黒島結菜=疫病神説に私も与(くみ)することになる。大河ドラマ『いだてん』では金栗四三(しそう)の解雇撤回を求めて、教室バリケードまでする、純朴な元祖アスリートお嬢様を演じて、好感度も高かったと思うのだが。

 それと忘れちゃいけないのが、同じくNHKで三年前に放映された『アシガール』だ。戦国時代にタイムスリップした女子高生が、イケメンの若君に尽くすため足軽として奮闘する。他愛ない設定だが、満足度は一級品だった。

 軽く見られがちだけど、実は傑作ドラマですよ。主演の黒島結菜と脚本の宮村優子をそう誉めたかったが機会を逸して取り上げられなかった。四年前の『時をかける少女』(日テレ土曜)の清楚で活発なヒロイン役も爽やかだった。

 そんな黒島結菜だから、あと一、二週もすれば、喜美子と八郎のモヤモヤも回復し、三津は工房再生の救世主として評価される展開になると思うんだけどな。

INFORMATION

『スカーレット』
NHK総合 月~土 8:00~
https://www.nhk.or.jp/scarlet/