昨年十二月、梅宮辰夫が亡くなった。
テレビドラマや東映ヤクザ映画に数多く出演してきたが、役者として高い表現力のあるタイプではなかった。
だが、決して「上手い」とはいえない硬質な演技と、独特の貫禄や押し出しの強さは、「その世界に長年いる本物の叩き上げ」の迫力を放っていた。同時に、その大らかでアバウトな感じの芝居は、不思議な明るさや華やかさを作品にもたらしてもいる。
頼もしくて明るい――そんな下町の兄貴分のような魅力が、梅宮辰夫という役者にはあったのだ。
そんな彼の魅力が遺憾なく発揮されたのが、一九六〇年代後半から七〇年代前半にかけて東映が製作した「不良番長」シリーズだろう。
全十六作におよぶ一連の作品は、バイクを駆って野放図に暮らすアウトロー集団「カポネ団」が、ヤクザたちと利害対立を起こしながら抗争していく物語が描かれている。
といっても、シリアスなものではない。シリーズを追うごとに、梅宮、山城新伍、鈴木ヤスシ、安岡力也、時には菅原文太や渡瀬恒彦も参加して、ひたすら悪ノリした大暴れを嬉々として繰り広げていく――そんな軽いコメディの仕上がりになっている。
今回取り上げる『不良番長 口から出まかせ』も、このシリーズならではの野放図な暴れっぷりを楽しめる一本だ。
冒頭から無茶苦茶だ。カポネ団は大きなイカダに乗って日本を脱出、海を漂流する。たどり着いたのはアメリカ。「ばんざい!」と一同が喜んだところでタイトルが出る。なんとも大らかな始まりだ。
が、実はそこはアメリカではなかった。男たちは遠洋漁業で出払った、女性だけの島。双方ともに欲求不満のカポネ団と島の女たちは、早くも浜辺で乱痴気騒ぎを始める。
さらに無茶苦茶な展開は続く。その勢いで女たちと大阪で違法の売春クラブを作り、一儲けをたくらむのだ。
で、そこでヤクザと揉め、抗争に発展していく。といっても、話そっちのけで山城を筆頭にふざけまくっていた。タイトル通り「出まかせ」な感じで、お祭り騒ぎのような楽しさが最後まで続いていく。
ただ、梅宮自身は大きくハメを外していない。実は、これが重要だ。主役が一緒にふざける役者だったら作品として破綻するし、真面目に役にアプローチする役者だったら完全に浮く。アバウトな大らかさでい続ける梅宮が主役を務めているからこそ、この世界は成り立っているのだ。だからこそ、他の面々は思うまま暴れることができる。
これぞまさに、「番長」。リーダーの鑑といえる。