前回に引き続き、梅宮辰夫の代表作である「不良番長」シリーズの話をしたい。
梅宮を筆頭に、山城新伍、鈴木ヤスシ、安岡力也らの演じる不良集団「カポネ団」がヤクザ相手に大暴れする一連の作品は、一九六〇年代の終わりから七〇年代の初めにかけて立て続けに十六作が作られている。そして実は、作品ごとに少し雰囲気が異なっていたりする。内藤誠と野田幸男、まったく異なる作風の二人の監督が交互に撮っていたためである。
内藤監督の作品は青春映画の匂いや社会派的なテーマも込めた、やや真面目な作り。で、野田監督の作品は――前回の『不良番長 口から出まかせ』がそうであったように、下ネタ満載のナンセンスギャグがひたすら続く、やりたい放題な作りになっている。そして、今観てみると圧倒的に面白いのは野田監督版だ。
中でも、今回取り上げる『不良番長 一網打尽』は特に凄まじい。映画をフィクションとして成り立たせている最低限のルールすら突き抜けた、ハチャメチャなギャグのオンパレードなのである。
といっても、ヤクザとの抗争の中で舎弟(誠直也)が命を落とす冒頭のシーンに始まり、序盤はマジメで大人しい。あら、野田監督なのに期待外れか――。と思って油断していると、二十分過ぎのところで、キャバレーでド派手なユニフォームを着てミュージカルばりに歌って踊るあたりから一気に加速し始める。
そして、三十分過ぎに山城新伍が合流し、ついに本領発揮となる。トイレで大便した山城が尻を拭こうとすると壁の向こうから手が伸びて「ハヒーッ」とあげる悲鳴が、その号令。結婚式場の牧師が由利徹だったり、声楽教室の講師が鳳啓助&京唄子だったりと、行く先々にコメディアンがいてストーリーそっちのけでギャグの応酬が始まる。逃げてきた女(ひし美ゆり子)を巡る下ネタ合戦や、半裸で街中を駆ける逃走劇も楽しい。
そして迎えるヤクザとの最終決戦は一転して、熱い。だだっ広い平原で大アクションが展開されるのだが、日焼けしたたくましい上半身むき出しでマシンガンを撃ちまくりながら戦う梅宮の姿は、まるでランボー。「俺は四十まで番長だからな! それまでは死なねえことになってんだ!」というセリフも頼もしい。
最後も凄い。エンドマークが出て、これで終わったと思ったら、「終」の「糸」と「冬」の間に梅宮と山城が割り込んで、次回の宣伝を始めるのだ。
エンドマークすら超越する、梅宮&山城の圧倒的なパワー。「不良番長」は死なないし、終わることもない。まさに、永遠の存在なのである。