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49歳になった瀬川六段はもう一花咲かせられるか

 瀬川アマと中井女流六段の一戦を将棋AIを用いて改めて調べ、分かったことがある。当時は二転三転だったと伝えられていたが、それは誤った認識だったのだ。

 この一戦は、瀬川アマがずっとリードしていて、一瞬だけ中井女流六段にチャンスがきたものの逃した、というのが正しい認識のようだ。瀬川アマがずっと押していたわけだが、当時検討していたプロはそう見ていなかった。つまり、当時の瀬川アマはプロより正確に判断していたのだ。

 特に横歩取りという戦法では、当時の瀬川アマは多くのプロよりも優れた感覚を持っていたのだろう。

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プロ入りを決めた後、取材に応じる瀬川晶司四段(当時) ©文藝春秋

 試験初戦の佐藤天彦奨励会三段(当時)戦は敗れたものの、後に名人となる佐藤三段相手に横歩取り戦法を用いて終盤は勝ちに近い形勢だった。そして結果的に最終戦となった高野秀行五段(当時)戦では、横歩取り戦法らしいギリギリの変化に飛び込み、常にリードを保って押し切った。

 プロより優れた感覚を持っていたからこそ、アマチュア時代にプロ棋戦で高勝率を誇っていたのだろう。

 いま、横歩取り戦法は下火になっている。それもあって、瀬川六段も成績が伸び悩んでいる。横歩取り戦法の次となる新たな武器を持てなかったことが痛い。

 そして将棋AIの活用の波にうまく乗れていない印象もある。

 木村一基王位が46歳で初タイトルを獲得したように、いまの将棋界はベテランの活躍も目立っている。

 49歳になった瀬川六段も、もう一花咲かせたい思いを強くもっているはずだ。不可能を可能とした男の活躍を願うファンは多い。

折田アマ、合格へのカギは?

 そして折田さんの挑戦はどういう結末を迎えるのか。合格へのカギは、試験官となる若手棋士よりも優れた感覚を持っているかどうかにかかっている。

 棋士編入試験第3局は、三間飛車戦法の使い手である山本博志四段が相手だ。そして第4局は、相掛かり戦法の使い手で、デビュー1年足らずでタイトル挑戦という偉業を達成した本田奎五段が相手となる。最大の強敵だ。

 それぞれの得意戦法に折田さんがどう向かっていくか。棋士編入試験第1局では対振り飛車戦法にうまい作戦でプロを圧倒した。プロ棋戦に出場した際は、相掛かり戦法で独特の感覚を見せて白星を重ねた。

 どちらの戦いも十二分にチャンスありと筆者はみている。

 折田さんの夢はかなうのか。茨の道は続く。

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