昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

京都は和風イタリアン! 季節の移ろいを表現する、絶賛の3軒

関西グルメ誌「あまから手帖」編集長が通う「京都、和食じゃない美味い店」

2017/06/24

genre : ライフ, グルメ

“だし”で素材感が際立つパスタ

 さて。2017年現在。私が面白いな、と思うイタリアンに共通するワードは“自然体”だ。無理に余所と差別化せんでもいいやん、自分流で。そんなシェフ達が伸び伸びと作るイタリアンが面白い。

 京都では、笹島シェフが新しいイタリアンを構築し、展開していく姿を見ていた世代が、ここ数年、次々と独立を果たしている。2014年12月、岡崎にオープンしたのは『CENCI(チェンチ)』。坂本健シェフの料理は、多層的だ。一皿の構成要素が多く、食べ進めるとこちらの感情が揺さぶられる。皿の表情が豊かなのだ。

 5月初旬、夜のコースで食べた筍の料理は出色だった。筍は塚原産の白子。穂先まで地中に埋まった状態で掘り出されるため、日光を浴びておらず、真っ白な筍だ。これをなんと2ミリ厚の薄切りにしてグリルしているのだが、上品な持ち味がギュッと凝縮されて、丸かじりにも負けない濃密さがあった。筍の上には、雪の下で熟成させたジャガイモ。さらにオンした雲丹は、途中でソースに化ける。野生のクレソンを噛めば、青さと苦みが雲丹の磯の香りをリセット…と思いきや、若布パウダーが口中に潮の風味を呼び戻す。私は筍狂で、毎年食べた筍料理をすべてスマホに記録しているが、今年のナンバーワンは文句なしで坂本シェフのこの一皿だった。

『CENCI』の筍料理。私の今年のナンバーワン

『CENCI』では、昆布にアサリ、魚系、椎茸の軸なども加えた鶏節と、常に4種程度のだしを用意している。「魚料理に鶏だしを少し加えると、逆に魚の持ち味の輪郭がはっきりするんです」とシェフは言っていた。京都で手に入る、馴染みのある旬の素材を、食べ合わせの妙で驚きのある皿に仕上げる、というのが彼の身上。その料理に深みを出すのが“だし”というワケだ。5月のランチで食べた「のらぼう菜とホタルイカのスパゲッティ」は、魚のアラと昆布のだし、日本酒を使ったトマトソースの旨みが鮮烈で、のらぼう菜のほろ苦さが一層際立っていた。

日本のだしを使った「のらぼう菜とホタルイカのスパゲッティ」
z