中国湖北省武漢市で発生した新型肺炎の感染拡大は、とどまるきざしを見せない。昨年12月上旬から囁かれていた流行は、1月20日に習近平国家主席が情報開示を指示する「重要指示」を出したことで、ようやく中国国内外で大々的に報じられた。その後は感染者数がうなぎのぼりに増加している。

 春節(旧正月)を前にした1月23日、中国はウイルスの発生源とみられる武漢市を封鎖した。だが、その後も中国人旅行者などが発病することで近隣各国でも感染の拡大が広がっている。同月28日には、武漢からのツアー客を1ヶ月間に2回受け入れたという奈良県内のバス運転手が新型肺炎を発症したことが判明し、ついに国内の日本人にも感染者が出る事態になった。

武漢市から日本人を退避させるため、日本政府がチャーターした全日空機。29日午前、羽田空港に到着。206人が帰国した ©AFLO

 いっぽう、流行の拡大を懸念する中国政府は、自国民の国内外への団体旅行の実施やパッケージツアーの販売を禁止する措置を取った。現状では正しい判断だと評価していいはずだが、これによって懸念されるのが、北海道や沖縄・京都をはじめとしたインバウンドマネーに強く依存している日本各地への経済的影響だ。

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 2019年の1年間、来日した中国人旅行者数は約959万人に達し、訪日外国人旅行者数の約30%を占めた。その前年(2018年)のデータによれば、彼らの年間消費額は1兆5450億円で、訪日外国人旅行者全体の合計消費額(4兆5189億円)の3分の1以上におよぶ。2019年の場合はより多くなっていただろう。

 新型肺炎の感染拡大がすこしでもとどめられるのはありがたい。だが、関連業界のダメージは想像以上に大きそうな気配である。

日本に遊びに来る中国人の約5割が「いなくなる」

 今回の中国における団体旅行禁止令は、1月27日からスタートした。中国人の日本ツアーはおおむね5~7泊くらいの期間であるため、2月4日ごろまでには、禁止令発令以前に日本にやってきた中国人ツアー客の大部分が帰国する。さらに短期ビザの滞在期間15日が過ぎる2月中旬以降は、日本国内から中国人のツアー客はほぼ消滅することになる。