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新型肺炎 インバウンドの経済損失は5000億円? 中国人観光客が日本から消える日

2020/01/30
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 いっぽうで個人旅行は禁止されていない……ように思えるが、実はこちらもかなり減るようだ。旅行業界関係者に聞いたところ、日本をはじめて訪れる多くの中国人個人旅行者は、ホテルと航空券をセットにした「個人向けパッケージツアー」を利用している。だが、こちらの販売も禁止されてしまったのである。

 いちおう、1月26日までに販売されたパッケージツアーを利用して日本に来る予定を立てていた人は、同月27日以降の来日が可能だ。ただ、中国国内では禁止令以前に販売された商品についても、キャンセル料を免除して全額返金を認める通達が出ているので、実際には日本への旅行を取りやめる人が多いとみられる。

 日本政府観光局の「観光統計データ」によれば、2017年の訪日中国人のうち、団体旅行客とパッケージツアー客が全体に占める割合の合計は43.1%だ。訪日目的を観光・レジャーだけに限ると51.9%に及ぶ。つまり、日本に遊びに来る中国人の4~5割にあたる人たちが、しばらく日本国内から姿を消すことになる。

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武漢以外の地域でも「家のなかでひっそりと過ごす」

 結果、団体旅行禁止令の発令以降も日本に来られる中国人は、自分で旅行サイトなどを使って宿を手配できる旅慣れた個人旅行者に限られることになる。もっとも、彼らについても出国が「可能」であるだけで、実際に日本に来るかは微妙なところだ。

「街では飲食店も軒並み閉まってしまい、商店街がシャッター街さながらの状態になっています。スーパーではインスタントか乾麺かを問わず麺類がすべて売り切れ。野菜も2倍の値段になりました。外に出ること自体を自粛して、家のなかでひっそり過ごす人が多いようです」

 1月29日、私の聞き取りにそう答えてくれたのは、江西省南昌市に住む中国人の友人である。人口が約4600万人の江西省は、同日午前1時現在で感染者が72人しか確認されておらず、死亡者もゼロとされている。

 封鎖状態にある武漢市をはじめとした湖北省の各地以外の、新型肺炎の流行が比較的おだやかだとみられる地域ですら、街はこうした状況になっているのだ。

こちらは江西省九江市。防護服を着たスタッフが住宅街を消毒している(1月25日撮影) ©AFLO 

「売上の8割が中国人客なんです。死活問題です」

 1月20日に習近平が情報公開を解禁して以降(ただし「解禁」された情報も事実である保証はない)の中国では、スマホ時代ゆえに真偽の不確かな情報がSNSを通じて大量に拡散し続け、日を追うごとに社会不安が増している。中国国内のニュースメディアですらデマ投稿に釣られている始末であり、当局お得意の言論統制も、もはやデマを流す人の母数が多すぎて追いつかない状況のようだ。