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新型肺炎 インバウンドの経済損失は5000億円? 中国人観光客が日本から消える日

2020/01/30
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 現在の中国は、個人旅行者といえども、とてもではないが気軽に海外旅行に行けるような雰囲気ではない。そもそも旅行に向かう飛行機に乗る以前に、国内移動のなかで駅や空港に立ち入ることすら控えたいと考える人のほうが多いだろう。

 上海市が2月9日まで企業活動の大部分の休止を呼びかけるなど、いまやビジネスも動いておらず、今後は商用の海外出張も激減する見込みである。つまり、新型肺炎の流行が一段落しない限り、日本からほぼ中国人旅行者の姿が消え去る状況がしばらく続くと思われるのだ。

「これまで、売り上げの約8割が中国人客なんです。死活問題ですよ」

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 ある免税店関係者は取材にそう話す。免税店のみならず、中国人客利用の多い高級ブランド店やホテル、レジャー施設なども相当な影響を被ることになりそうだ。加えて言えば、台湾や香港・ベトナムなどの中国の近隣各地域でも、不要不急の海外旅行を手控える動きが広がるのはほぼ確実である。

訪日外国人に人気の高い免税店LAOX(※本文とは直接関係ありません)。 ©iStock.com

SARSは「情報公開」から「終息宣言」まで3カ月だったが……

 1月29日現在、中国国内外で報告される新型肺炎の感染者数は刻一刻と増え続けている。

 今回の新型肺炎は、2002~2003年に猛威をふるったSARS(重症急性呼吸器症候群)よりも症状はやや穏やかだとみられるが、症状を発症していない人からも他者への感染があるとされるなど、感染力はおそらくSARSよりも高い。

 ちなみにSARSの場合、2002年11月に広東省で最初の症例が発生。中国政府の情報隠蔽のなかで香港や台湾・カナダなど世界各地域に拡大した後に2003年4月から中国政府の情報公開がある程度はなされるようになり、同年7月にWHOから終息宣言が出されるまで流行が続いた。

 インフルエンザや往年のSARSの流行を踏まえて考える限り、今回の新型肺炎はまだ流行や感染拡大のピークに達しない段階ともみられる。すくなくとも、中国国内の庶民の間ではそう認識されているようだ(注.ただし、今後の見立てやウイルスの性質などについては本記事よりも専門医の知見を参考にしていただきたい)。

2019年1月~3月の中国人客の消費額は「4000億円」だった

 ゆえに、あくまでも仮定のうえの単純計算になるが、たとえば中国人旅行者の減少がこれから2月・3月・4月の3ヶ月間続いたとする。全体の4割を占める団体旅行客とパッケージツアー客がほぼ完全に消滅し、個人旅行客は半分に減る――。かなり甘めの推算だとは思うが、とにかくそう考えたとしよう。