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 この場合、2018年ベースの数字を基準に算出しても、3カ月間の日本のインバウンド業界の損失規模は2700億円以上となる。

 ただし実際は2018年よりも中国人旅行客の消費額は増えているはずなので、ベースの数字はもうすこし高く見積もったほうがいい。例えば2019年1~3月期の中国人旅行客の消費額は4021億円に達しているからだ。

 加えて、あくまでもSARSの例を下敷きにして考える限り、新型肺炎の流行と中国人の海外旅行の手控えは5月以降も続くはずである。

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日本―中国便は中国系キャリアだけで週に「1130往復」

 ちなみに近年、各航空会社は日本―中国便の増便を続けてきた。

 特に2019年9月に日中間が航空便乗り入れについての規制緩和をおこなったことや、中国人旅行客の増大を受けて、同年10月27日からの冬ダイヤでは中国系の各航空会社が日本便を大幅に拡大。同年夏ダイヤと比べて1週間あたりで230往復以上を増便し、中国系キャリアだけで週あたり1130往復以上を運航するようになっている――。

 だが、この大幅増便の流れも、新型肺炎による海外渡航需要の大幅な下落を受ける形で急ブレーキがかかるのはほぼ確実だろう。

人の往来が激減し、ガランとした北京の街(1月28日撮影) ©AFLO

 現在の状況のもとでは、中国はもちろん台湾や香港などの旅行客も間違いなく減っていく。さらに今後、日本国内で武漢渡航歴のない日本人の感染者が増える事態になれば、欧米や東南アジアからの旅行客も減少するとみられる。

 こうした一連の事情をすべて勘案して考えれば、今回の新型肺炎による日本のインバウンド市場の経済損失は、訪日旅行者の消費額だけに限っても5000億円ではきかないかもしれない。

1万7000円の怪しい機械を爆買いするツアー客

「これ、ガイドさんがオススメしていた『電子マスク』なのよ! 日本の技術で、この機械を首からかけているだけでマイナスイオンが出て新型コロナウイルスを殺すんだって。ひとつ1万7000円だったけど、3つも買っちゃった」