1ページ目から読む
2/4ページ目

 一時的下落だ、と言われた消費支出も実際には下がり続けており、9月の消費支出(2人以上家計)は27万5226円となり、前年同月比ではマイナス5.6%となり6か月連続でマイナス、更にこの数字は2011年の3月、つまり、震災直後、東京などでも店頭から物が消えて買いたくても買えなかった時の29万3181円を大きく下回っており、震災直後の状況よりも支出が少ない、というのが実態なのです。実質賃金は15か月連続で下がり続け、直近では前年同月比マイナス2.9%まで落ち込み、スーパー、コンビニといった最もダウンストリームに位置する業種(つまり、多少の景気後退では節約しにくい生活必需品レベルを扱う業種)でさえ、売り上げは6か月連続で減少しています。この状況を見て消費税増税の影響がないとはよく言えたものだと思います。

 その中で追加緩和を実行した訳ですが、これまでの推移で明らかなように金融緩和は一時的に株式市場を活況にする効果はありますが、最終需要が増えて、企業が設備投資をしたり、一般の国民の給与が上がり、最終消費が増えるわけでもないので、実体経済の回復とは全く別物なのです。安倍政権は株価さえ上がっていれば景気が良い、と信じているフシがありますが、まさにケインズが「株式価格は美人投票で決まる」と喝破している通り、実体経済とは全く関連性がありません。たとえばリーマンショックの最中では、金融株などはほぼゼロになるほど売られましたが、マイクロソフトなどの優良株の価格は上がっていたわけです。

 金融緩和の実態を見ても、マネタリーベース、つまり日銀から市中の銀行への資金供給は爆発的に増えています。しかし、問題はその先、つまり市中銀行が民間に融資をして、マーケットにお金が流れているか否かです。しかし、融資量はほとんど伸びておらず、銀行は供給された資金を日銀当座預金(日銀当預)にそのまま預けているために日銀当預の量は増える一方と言うとんでもない状況になっています。日本においては金融緩和は1990年代からずっと続けており、安倍政権によれば、その間日本経済は停滞し「日本を、取り戻す」とまで言っている訳ですから、金融緩和そのものが経済回復になんの効果もなかったことは明らかになっているのですが、それを無視して追加緩和する、と言うことはまさに株価さえ上げておけば景気が良く見えて、その環境で消費税を10%にしてしまおう、という意図が透けて見えます。

ADVERTISEMENT

 しかし、元々消費税増税の根拠になっていたのは、「税と社会保障の一体改革」であり、財政再建と社会保障費の拡充のためなら仕方ない、と多くの国民が納得したのではないでしょうか。

 しかし、実際に消費税増税後、社会保障の方は年金の支払い年齢の引き上げ、健康保険料の値上げなど、後退するメニューばかりの一方、予算規模は戦後最大にまで膨れ上がり、財政再建どころではありません。もともと消費税増税は我々国民からお金を取り、そのままそれを政府セクターが使うことを意味し、最も経済効率の悪い政府という経済主体にお金を移転することを意味します。民間に於いて効率的に使い、納税により政府の所得が増えることに比べれば政府セクターにお金を使わせると言うのは非効率の極みで、元来は増税分を財政再建や社会保障費に回し、支出を減らさねばなりませんのでこれこそ本末転倒なのです。

 しかし、消費税増税により景気後退するということをうすうす感じている安倍政権は、増税の一方で、「第二の矢」である公共投資を増やし続けているのが実態です。さらに性質(たち)が悪いことにローカルアベノミクスなどと、地方再生を旗印にさらに地方にばらまき政策をすることになっており、もはや消費税増税分が財政再建に使われるなどという話は雲散霧消してしまいました。「アベノミクスは蜃気楼」と当初からワタクシは指摘しておりましたが、これが実態なのです。

 では日本経済は壊滅してしまうのでしょうか。

 もし、今の経済政策、異次元の金融緩和と公共投資の増大を続けるつもりなら答えはイエス。世界中の投資家がそのリスクに既に気が付いています。

【次ページ】財政破綻はしない