GDPに換算できない価値
例えば日本では夜になっても子供たちが電車に乗って塾に通う風景が良く見られます。しかしこれはアメリカでは考えられない。親が送り迎えしないと危なくてどうにもならないので、午後は子供の送り迎えで母親や父親がオフィスを出てしまい、仕事にならなかったりします。会社も黙認する訳ですが、日本では幼児の送り迎えはあるにせよ、高校生の送り迎えに親が会社を早退することは有り得ないでしょう。この経済的損失の回避をGDPに換算したらどれだけの金額になりますか? 安全に子供が一人で電車に乗れる環境にはものすごく大きな価値があるのです。こうした目に見えない価値を具現化できている先進国はせいぜい、シンガポールでしょうか。しかしシンガポールは別名「明るい北朝鮮」と言われるくらいで、効率的な社会の実現の裏で、厳しい言論統制を敷いており、政権は事実上世襲状態となっています。その意味で日本と言う国は世界でもまれにみる成功した国なのです。
地方再生についても同じ視点が必要になるでしょう。私が活動している岩手県紫波町は人口3万4000人ほどで、この先も高齢化が進み、財政負担も増えていくのですが、だからといって地方消滅などと騒ぎ立て、なけなしの税金を投入するのは愚の骨頂です。フランスのカマンベールチーズで有名なカマンベール村の人口はわずか200人です。しかし行ってみればわかりますが、貧困にあえいでいる訳ではなく、住民は楽しく暮らし、昼からワインを飲んでいます。
GDPで言えばフランスは日本の半分しかないのですが、日本より後進国と言うことになりますか?
答えは明らかなように、地方再生とは、要するに身の丈にあった経済システムの導入が必要であり、補助金に頼らず、地方が自らの力で立ち上がる意思を持ち、さまざまな規制を撤廃し、その邪魔を政府がしない、という視点が必要です。この点については石破地方創生大臣、小泉政務官がどう実行されるのか、地方再生に携わるものとしては興味のある所です。