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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

「監禁での立件は難しい」逮捕から1週間を経ても、氷山の一角しか見えなかった

完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件 #4

2020/04/21

genre : ニュース, 社会

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 2002年3月13日になって、7日の逮捕以来、黙秘を続けていた男女の身元がついに特定された。彼らは松永太(逮捕時40)と緒方純子(逮捕時40)で、この段階においても、名前を含めて一切を黙秘していた。

 この身元判明と同時に、松永の福岡県筑後市の実家と、緒方の同県久留米市の実家に対する家宅捜索も行われている。

©iStock.com

過去に詐欺容疑でも指名手配

 彼らの身元が判明したのは、押収物のなかに緒方の健康保険証があったから。そこで身元の確認作業を進めた結果、本人と断定したのである。さらに周辺捜査によって、交際相手の松永の存在が浮上したのだった。また、すでに時効が成立しているが、彼らが過去に福岡県警柳川署において、詐欺容疑で指名手配されていたことも明らかになった。

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 同時に、7日に福岡県北九州市小倉北区泉台の『泉台マンション(仮名)』で保護された男児4人のうち、9歳と5歳の男児が緒方の子供であることも、一部メディアが捜査関係者の話として報じている(※DNA鑑定による確認はその後のこと)。緒方は同県久留米市に住民票を置き、男児2人はそこで住民登録をされており、5歳の男児がまもなく6歳となるため、同市教委が緒方宅に就学通知書を郵送したが、返送されていた。市教委は3年前にも9歳の男児に同通知書を送っていたが、それも同様に返送されてきていたという。

©文藝春秋

弁護士が配布した「弁解」

 3月14日は午後1時から小倉北区にある弁護士会館で、松永と緒方の弁護士による会見が開かれた。その場には私も出席しており、会見に先立って以下の用紙が配布されている。

〈本件の逮捕・勾留事実である監禁・傷害罪についての被疑者らの弁解は以下のとおり。

一 監禁罪について

 以下の事実により、監禁罪の成立はあり得ない。

 すなわち、「監禁」とは、人が一定の区域から出ることを不可能または著しく困難にすることをいうが、

1 家の鍵は常時室内に掛けており、少女にも渡していた。
2 常に現金も所持させていた(6千円~1万円)。
3 バスカード、テレホンカードも所持させていた。
4 1人で買い物にも行かせていた。
5 タクシーも1人で頻繁に利用させていた。

 という事実があり、「監禁」にあたらない。