大阪市で外来アリの侵入確認 しかもこれが2例目……
つい昨日、6月26日に、危険な外来アリが大阪で発見されたとの報道が発表され、環境省をはじめ、関係機関を慌てふためかせている。その外来アリとはアカカミアリというアメリカ大陸原産の毒アリである。
大阪市の発表によれば、大阪市の南港で陸揚げされたフィリピンからのコンテナにアカカミアリが付着していることが確認され、このコンテナが移送され保管されていた場所すべてを調査した結果、大阪市において生きたアカカミアリ2匹が捕獲されたという。現在、大阪市と環境省では、緊急の調査を進めている。
実はこの報道には前段があり、このアカカミアリの発見を遡ること1週間ほど前、神戸市にこれもまた強力な外来毒アリが発見されたという報告が発表され、大騒動となっていたのである。そのアリの名はヒアリ。
今回は、まず、この神戸でのヒアリ侵入騒動から振り返り、今後のリスク管理のあり方について解説してみたい。
「毒アリ」侵入騒動、それは神戸から始まった
強毒性の外来アリ、ヒアリ。ヒアリは英語でFire Antと書く。その名の通り、刺されると火の粉をかけられたような熱さに似た激しい痛みを感じる毒アリである。
今、世界中が最も侵入を警戒する外来種の一つであり、日本でも環境省・外来生物法の規制対象種である「特定外来生物」に指定されている。指定時は、まだ日本には侵入していなかったが、その強い増殖力と分布拡大能力、それに伴う深刻な生態リスク、さらに何よりも人を刺傷し、最悪死に至らしめるという人の健康に対するリスクに基づき指定が決定された。
2000年代に急速に分布を広げたヒアリ
ヒアリは南米原産とされ、1930年代から船に乗って北米に侵入し、アメリカ合衆国南部のフロリダ州やテキサス州を中心に分布を広げている。特にレイチェル・カーソン女史による「沈黙の春」が1962年に出版されて以降、害虫防除の特効薬とされたDDTに代表される有機塩素系殺虫剤は、生態影響が大きいという理由で米国内での使用が規制され、その結果、いっそうヒアリの拡大を許して現在に至っているというエピソードは有名である。ちなみにスピンオフ・ネタとなるがDDTの世界的規制は、熱帯地域の途上国における蚊の防除も困難とし、マラリアの再興をもたらしてしまったとされる。
さて、そのヒアリも1990年代までは、それほど世界的な注目を集める外来種でもなかったのだが、2000年代に入ってから、アジア太平洋の国々・地域に急速に分布を広げ始め、にわかに世界一級の外来種のステータスを得ることとなった。ニュージーランド、オーストラリア、マレーシア、中国南部、そして台湾と、次々に飛び石的に、しかもたった5年という短期間で彼らはアジア地域への侵入を果たした。
なぜ21世紀になってからここまで急速に分布を拡大したのか。その背景には近年のグローバル化という大きな潮流があると考えられる。かつてはジャングルの国であった南米の国々は今やプランテーション大国となり、大量の農作物と林産資源を輸出している。そして、かつては農林産物輸出国であった中国や東南アジアが経済発展によって資源輸入大国となり、南米からアジアに向けての物資の輸送量が増加しているとされ、この経済フローに乗っかってヒアリもアジアへと渡ってきたと推測される。