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「毒アリ」来襲! 神戸・大阪で露呈した“侵入リスク”

なぜヒアリ、アカカミアリは日本に「侵入」してきたか

2017/06/27

東京や横浜、名古屋、そして福岡も対岸の火事ではない

 ちなみに、神戸市では、すでにアルゼンチンアリという南米原産の外来アリが高密度に生息しており(本種は無毒。そのため対策が後手になっている……)、今回の新たな外来アリの上陸によって、特定外来生物に指定されている外来アリが3種も神戸港に集結したことになる。これだけ多様な外来アリ類が侵入してくるということは、いかに神戸が国際港として多様な国や地域から物資を搬入されているかを示している。

 そして、このことは、神戸以外の地域の国際港でも当然高い確率で起こり得ると考えなくてはならない。実際に2014〜2016年度にかけて実施された国立環境研究所の研究プロジェクトにおいて、各港の貿易統計からヒアリの侵入リスクを評価した結果、東京や横浜、名古屋、大阪、博多など、スーパー国際港と言われるエリアはいずれも侵入リスク・ランキングの上位に挙げられている。そして冒頭に記した通り、実際に、神戸に次いで大阪でもアカカミアリが発見されてしまった。まずは優先的にこれらの国際港においても警戒態勢を強化すべき、と言えるであろう。

輸入量に基づくヒアリ侵入リスク都府県ランキング(環境省・環境研究総合推進費課題4-1401 課題代表:国立環境研究所)

 もし、今後、ヒアリ、アカカミアリの定着が発見される事態になれば、即時に防除し、根絶する必要がある。防除については、すでに国立環境研究所においてアルゼンチンアリを対象にベイト剤を含む化学薬剤を活用した手法が開発されており、東京都大田区および横浜市のアルゼンチンアリ集団を根絶した実績もある。本手法をベースにヒアリ、アカカミアリについても適正な計画的防除を実施すれば確実に根絶できると我々は考えている。

新たな巣が飛び火的に広がってしまう恐れ

 ただし、ヒアリ、アカカミアリとも巣が成長すると、有翅虫といわれる羽をもった新女王とオスが生産され、新天地を求めて飛行移動を開始する。その飛翔距離は気流に乗れば10キロ、20キロと長距離に及び、新たな営巣が飛び火的に広がってしまう恐れがある。他国でもこうした特性が本種の防除を困難にしており、分布拡大を許してしまっている。

フロリダのヒアリ 撮影:五箇公一

 有翅虫を飛ばすほど巣が成長するまでには数年間はかかるとされており、そこまで発見を遅らせることなく、早期に発見し、早期に防除することがひとつの防除戦勝ラインとなると考えられる。もし、この防除ラインが突破され、一度有翅虫が飛び立てば、新たな営巣地を探しては発見する度に駆除するという、イタチごっこの長期戦に持ち込まれることとなる。現時点で計画的化学防除以外の有効な防除法が確立(効果の検証)されていない以上は、そうなる前に叩くという臨戦態勢を準備しておくしかない。

 現在、神戸、大阪と、これら外来毒アリが発見された箇所について緊急の防除体制がとられているが、日本が貿易大国である限り、今後もヒアリ、アカカミアリの侵入は続くと覚悟しなくてはならない。今回のヒアリ、アカカミアリ発見は、やや過剰な騒動とも言えなくはないが、行政・国民の間に外来種に対する意識の向上が図られたという意味ではいい機会であったと受け止めたい。これをきっかけとして環境省も他の省庁および自治体と連携して、さらなる外来種対策の強化を図ることが重要な行政課題となろう。