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地裁判決直前 “森友事件”の籠池泰典氏が語る「検察特捜部との長い戦いがはじまった“あの日”」

『国策不捜査』プロローグ編

「森友事件」の最大の問題

 マスコミによる報道も「森友事件」の最大の問題は、国有地売買における8億円値引きについての疑惑だという点で一致していた。

 4日前の7月27日に行われた一度目の取り調べでは、その前日にNHKが報じた「森友学園値引き経緯明らかに」というスクープについて詳しく聞かれた。国有地値引き交渉で、実は学園側から支払い上限の金額として1億6000万円の提示があった、という報道だ。

 これは財務省の佐川宣寿理財局長が4ヶ月前の3月15日の国会答弁で「価格につきまして、こちらから提示したこともございませんし、先方から幾らで買いたいといった希望があったこともございません」と話したことを真っ向から否定する内容だった。

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 ボクはこの件について取り調べを受け、

「特捜部は国有地8億円値引きを本気で立件したいんだ」

 そう実感した。

「籠池さんは近日中に予定など入ってますか?」

 途中、雑談をすることもあった。

「籠池さんは近日中に予定など入ってますか?」

「8月6日の広島平和記念式典に参加しようと思ってます。被爆した父の名が原爆死没者名簿に登載されましたので、慰霊に行ってこようかと」

「へー、そうなんですね」

 こんなやり取りもあったので、「本日の逮捕はないな」と思っていた。

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 午後3時30分よりサステナブル補助金についての話になった。それと同時に堀木検事がしきりに時計を見るようになったことが印象に残っている。3つの契約書の存在について問われたので、弁護士の指示通り黙秘した。すると、

「ちょっと待っていてください」

 そう言って、しばらく部屋から姿を消していた堀木検事。

 戻ってくるなり袖机から書類を取り出して読み上げる。

「……の容疑で逮捕します」

手錠をはめ、腰縄をかけ出した――逮捕容疑は詐欺。

 内容は頭に入ってこず、その言葉だけが耳に飛び込んできた。

「なんだ、最初から部屋には逮捕状が用意されていたんだ。それならとっとと逮捕してくれればよかったのに。時間稼ぎをしていたんだな」と言い返す。

 逮捕状の有効期限は7月31日から8月7日まで。つまりこの日に発行されたものである。

 突然、5人の係員が検事室へとなだれ込んできた。ボクの周囲を取り囲むと手錠をはめ、腰縄をかけ出した――。

 逮捕容疑は詐欺。