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新型肺炎で「1000万人の犠牲」も覚悟か? WHOを恫喝した習近平の“非情な思惑”

元自衛隊陸将が読み解く

2020/02/04

 新型ウイルス事態に対する基本認識は、「これは一過性のものである」ということだ。この事態が、スペイン風邪のように「二冬」も続くことなく、「今年の冬のみ」で制圧・克服できるかがポイントだろう。

 従って、この事態に対処する基本方針は「如何なる荒療治も辞さず、人・物の損害・犠牲を最小限に抑えて『今年の冬のみ』で乗り切ること」である。

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 中国にとって、新型ウイルス対処で最も重視すべきことは、習近平・共産党独裁体制の堅持である。これは、手段を選ばずに実施しなければならない。この事態で、人民はパニック状態となり、習近平政権に対する怨嗟の声が高まるだろう。ただ、幸いなことに、人民は新型ウイルスに対する恐怖や心身の弱体化により、強力で組織的なデモや暴動は起こしにくい状況にある。

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 しかし、新型ウイルスの拡大が低調になれば、デモや暴動が活性化する可能性もある。これに対しては以下のような対策・手段を講じるだろう。

李克強総理に全責任を負わせる布石を打っている

(1)トカゲのしっぽ切り戦術
 北朝鮮・金王朝三代など独裁者が特にやってきた、責任を他に転嫁する手法である。湖北省のマスクの年間生産数を間違え、「108億枚から18億枚、最後は108万枚」に3度も言い直した王暁東省長など、同省と武漢市の幹部の初動対応を槍玉に挙げて処断することが考えられる。

(2)派閥闘争(太子党対共青団)
 自派閥(太子党)のライバルである、共青団トップの李克強総理を中央新型コロナウイルス肺炎対策工作指導グループ長に任命しているので、最終的には彼に全責任を負わせることができる布石を既に打っている。

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(3)武漢市の事実上の封鎖の意図
 コロナウイルス肺炎感染が深刻化している武漢市に事実上の封鎖措置を実行させた(表向きは武漢市決定)。この措置には、デモや暴動が全国に広がる兆しが出たら、それに先駆けて地域ごとに分断・孤立化させる意図も含まれている。

(4)軍・武警の即応体制
 軍・武装警察部隊には、高度の即応体制をとらせ、米国などの介入はもとよりデモや暴動への対処を準備させる。これにより、軍のクーデターも抑止できるはずだ。