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パチンコに半生を捧げた男たちが語る“業界の真実”――システムエラーが生んだ珍奇な生き物

「たいして勝てません」となぜ言えない?――『パチンコ滅亡論』(扶桑社)より #1

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ヤング なんでかわからんけど、必ず景品交換所があるもんな(笑)。

大崎 敷地内に当たり前にな(笑)。30年打っててもツッコミたくなるご都合主義だけど、でもこれが形式上はキッチリ合法なわけ。一般社会の通念からしたら……そりゃ胡散臭い商売に見えるよね。

ヤング 出た玉がお金に換えられるっていうのが最大の売りのはずなのに、そのことは絶対に声を大にして言えない。一番のセールスポイントが謳えないって、そんな商売、ほかにないよね。だからおもしろいんだけどパチンコって(笑)。

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大崎 売り上げも何千億円ってどんどん巨大化していったパチンコ屋や大手メーカー(*7)があるにもかかわらず、その原資となってるものはやったらダメな釘調整。客は禁じられているはずの換金を目当てに集まる。こんな業界あります? ここをツッコまれると、モゴモゴ……とならざるを得ない状況のまま、今もやっているわけで。ええかげん何とかせんといかんでしょ、って感覚はないのかと思っちゃうよね。苦しくないですかって。

*7 巨大化していったパチンコ屋や大手メーカー
フォーブスジャパン社が毎年発表している「日本の長者番付TOP50」の19年版にランクインした業界関係者はSANKYO(10位)、マルハン(17位)、ユニバーサルエンターテイメント(21位)、三洋物産(38位)、平和(43位)、セガサミーHD(50位)の代表者たちだった

ヤング そこに関しては見て見ぬふり感がすごいよね。業界インサイダーになればなるほど口をつぐむっていう。

大崎 でもね、もう認めましょうよと。でないと収まりつかないんちゃうかって、打つ側でも心配になっちゃう状況でしょ? 業法制定(*8)を目指した上で、パチンコというものを定義し直して。遊技(*9)と娯楽とギャンブルの間にあるものだから、その中間の収めどころを探る。日の当たる産業として存続していくには、そういう、ちゃんとした方向しかないのかもと思ってしまう。

*8 業法制定
キャバクラやホストやガールズバー、雀荘やゲームセンターと風営法のなかで一括りにして管理するから無理があるのであって、パチンコは別のものとして独立した法律を作ればいいという考え方をする人も業界内にはいる
*9 遊技
風営法の観点では技術介入性があるものが「遊技」であり、サイコロやすごろくのような運だけで勝負が決まるものが「遊戯」となる。読み方は一緒でも漢字の違いで意味が大きく異なるので注意。ちなみに、パチンコという遊技で技能を競った結果(出玉)に対して提供されたものは景品ではなく賞品となる

ヤング それは一部の業界人の悲願でもあるよね。現状のパチンコは、既存の物差しでは定義できない存在なわけだから。でもハッキリさせたら死ぬ……少なくとも我々の愛する玉虫色のパチンコではなくなる覚悟が必要だけど。

日本的なソリューションがパチンコを生んだ

世界各国で人々は「バクチ」に興じる ©iStock.com

大崎 そんなよくワカンナイ存在のパチンコが、なぜ日本でこんなに流行したのか? きみはどう思ってるわけ?

ヤング まずもってバクチは好きだよね、みんな。

大崎 バクチは世界共通で一般庶民の娯楽だからね。しかも小バクチ。

ヤング 食うとか寝るとかの生命維持以外の欲望でいうと、楽して儲けたい、女を買いたい、あと個人的な考えだけど戦争したい、っていうのが三大欲望だと思うのね。戦争したいは意見が分かれるかもだけど、でも有史以来戦争が完全に途絶えたことはないわけで、認めたくはないけど、人間はどっかで戦争したいっていう欲望があるに違いないと思ってるんだけど。で、その3つの欲望を社会が大っぴらに認めてしまうと、社会がとんでもなく混乱するから、道徳や宗教、あともちろん法律で禁じたり、条件を狭めて一部認めたりしてるんだけど、そのやり方に民族性とかお国柄が表れるんじゃないかと。