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パチンコに半生を捧げた男たちが語る“業界の真実”――システムエラーが生んだ珍奇な生き物

「たいして勝てません」となぜ言えない?――『パチンコ滅亡論』(扶桑社)より #1

note

大崎 そもそもパチンコってめちゃくちゃなパーツが何となく同じ方向を向いて、めちゃくちゃなまま合体したキメラみたいなものだから。無理やりいろんなものを合わせこんで一つのパッケージとしてまとめるという、ある意味「総合芸術」と言っても大げさではないわけで。

ヤング 激アツリーチの後、盤面がバッシャーンってなって、こんなスゲー役モノ(*12)、どこにしまってあった?って(笑)。あれ合体ロボだよね。

*12 こんなスゲー役モノ
入賞口などの出玉を得る起点となる法律用語としての「役物」、ハネモノなど大当たりに直結する部分の「仕掛け」、その他演出を補うための「装置」のことを総称して役モノと呼ぶが、一般的にはハネモノなどの仕掛けのことを役モノと呼ぶことが多い。なお、本文中では装置としての役モノのことを指しており、この装置のことは「ギミック」とも呼ばれる

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大崎 で、有名アニメで有名声優さん使って、トップアイドルも出てくる。

ヤング あとブルブル振動して、今や風も出てくるのが当たり前(*13)(笑)。

*13 風も出てくるのが当たり前
映画館のIMAXや4Dのように、もはや香りを発しても驚かない。数年後にはVRタイプのパチンコが出てきて体験型世界旅行パチンコとか出てくるかも……。そうなると、タイアップは世界ふしぎ発見かな?

銀色の玉が人々を誘惑する ©iStock.com

大崎 でも、やってることは数字が揃うか揃わんか、玉が出るか出ないかってだけ(笑)。摩訶不思議だよね。こんなものが一大産業として、売り上げが20兆円(*14)もあって、娯楽産業の中心に座ってるわけ。世界に誇っていいと思うんだよ。バカバカしいけどスゴいだろ? って。

*14 売り上げが20兆円
日本のレジャーに関する代表的統計であるレジャー白書によれば、パチンコ業界の売上は05年の34兆8000億円をピークに年々減少し、現在は20兆円を割っている。またカジノなどはプレイヤーが投じた金額から獲得した金額を差し引いたものを売上とするのだが、パチンコにおける売上とは貸玉料金のみで換金した金額を差し引いていない。だからこの数字を根拠にカジノ業界とパチンコ業界の規模を比較するのはナンセンス

ヤング ジス・イズ・クールジャパン!

大崎 庶民文化の結晶ですよ。なのにそれが悪いモノとして、世間からはつまはじきになってる。それがまた不思議というかオモシロというか。パチンコってつくづく鬼っ子なんだよね。

ヤング なんていうかさ、どんな国でも完璧な社会やシステムってあり得ないわけじゃない? で、パチンコって日本という社会のなかで、制度のほころび、システムエラーによって偶然生まれちゃった珍奇な生き物のような気がするのね。それが大衆の欲望をエネルギーにして巨大化して長生きもしてきたんだけど、グロテスクな生き物だから毛嫌いする人も多くて。なんか放射能が生んだゴジラみたいだけど(笑)。で、そういう視点で見たら、パチンコっていじらしいし、本当に面白いと思うんだけど。

なぜパチンコは日本にしかないのか

大崎 その存在そのものの面白さがなかなか理解されない。オレは雑誌作りに関わっていくうちに、パチンコ産業全体の成り立ちであったり、その周辺のいろんなことのほうが面白いかもって視野が広がって。パチンコの置かれている状況を考察していくうちに、日本にしかないパチンコ(*15)って何者なんだろう?ってことに思いを馳せるようになったんだよね。

*15 日本にしかないパチンコ
現在はグアムや台湾にもパチンコ台は存在するが、そこで使われているのは日本で作られたパチンコ台

ヤング 実はパチンコの何たるかをどんどん突き詰めていくと、最終的には日本を日本たらしめてる「何か」の正体もわかるんじゃないか? みたいなことも夢想してるんだけど。

大崎 そこをもっとうまく伝えることができれば、パチンコ産業というのは認知されるだろうし、ある意味、とても日本的な侘び寂びを含んだ愛すべき存在だなって理解が得られると思うんだけど。そういうニュアンスをパチンコ業界側はまったく出してこないもんな。

ヤング そこの面に関しては、自覚すらしてないんじゃないって気がするわ。

パチンコ滅亡論

大崎 一万発

扶桑社

2019年12月20日 発売

パチンコに半生を捧げた男たちが語る“業界の真実”――システムエラーが生んだ珍奇な生き物

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