詐欺容疑で逮捕された籠池氏は大阪拘置所で独房に入れられた上、接見禁止措置が付けられていた。そこは孤独を思い知る場所だったと言う。「刑務官と事務的なやり取りをする以外、とにかくずっとひとりぼっちだった。まとまりのある会話ができるのは堀木博司検事のみ。彼だけがボクにとっては世界に開かれた窓なのである」経験した者しか語ることが出来ない2人きりの密室で行われた特捜部の事情聴取の実態。

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「特捜部が動いたら面倒なことになりますよ」

 そもそもボクは森友事件の報道があるまで、検察庁や特捜部についてそれほど詳しい知識があったわけではなかった。

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©文藝春秋

 証人喚問の準備のため帝国ホテルに籠もっているとき、補佐人を担当してくれた「リンク総合法律事務所」の山口貴士弁護士から、

「刑事事件になったとき、大阪府警ではなく特捜部が動いたら面倒なことになりますよ」

 と聞かされた。だが、正直に言うとピンとは来ていなかった。

検察が法律的に持つすべての権限を行使できる組織

 意識しはじめたのは、いろいろな報道が出始めた2017年6月くらいからである。

《日本の検察は刑事事件を起訴して裁判を求める権限、「公訴権」を独占しています。警察にせよ国税庁にせよ、検察が起訴しなければ刑事裁判ができません。とてつもない権力を付与されています。

 そのうえ特捜部は他の検察組織と違い、自ら捜査をして逮捕もします。検察が法律的に持つすべての権限を行使できる組織が特捜部なのです。

特捜検察vs.金融権力』などの著者でジャーナリストの村山治氏は次のように書いています。

「独自捜査をする特捜検察は、(警察と違い)捜査段階で外部のチェックを受けることはまずありません。一応、裁判所が逮捕令状などの審査でチェックはしますが、基本的にはほとんどそのまま通ってしまいます。捜査中に弁護人が被疑者の利益や権利を主張しても、ほとんど通りません。あるのは内部のチェックだけです。

 そして、捜査をした検事が、捜査で収集した証拠を検討し、有罪だと確信すれば被疑者を起訴する方針を決め、上司の決裁を得て起訴します。ここでも、検察内部以外のチェックは受けません。結果として、特捜部に逮捕された主要な被疑者は、ほとんど間違いなく起訴されます。逮捕の段階で起訴することは事実上、決まっているといってもいいのです」

 大阪地検特捜部ににらまれた段階で、籠池氏が起訴される運命は決まっていたということです。》