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保釈条件を無視して、日本を秘密裏に出国

 ゴーンさんへのフリースを差し入れた話をスポーツ新聞で報道してもらったところ、ニューヨークタイムズから家内に取材依頼があった。海外のメディアの方が日本の刑事司法のいびつさに対して鋭敏な問題意識を持っているのだなと実感したものだ。

 東京地方裁判所は2019年3月5日、保釈を決定し、検察側の準抗告も同日に棄却されたため、ゴーンさんは保釈された。しかし東京地検特捜部は4月4日に4度目の逮捕に踏み切る。

 2019年4月23日、フランスのマクロン大統領が安倍さんに対し、ゴーンさんの人権に配慮するよう求めたこともあってか、検察の反対を押し切って4月25日、再度の保釈が決まった。外圧があるとコロッと従来のやり方を変えるのはいかにも日本らしいのだが、それでも喜ばしいこと。特捜事案における過度な長期勾留は、ボクたちが最後であってほしいと切に願っていた。

 そんな中、2019年12月29日、ゴーンさんは保釈条件を無視して、日本を秘密裏に出国した。レバノン入国後、「日本の司法制度は、国際法・条約下における自国の法的義務を著しく無視しており、有罪が前提で、差別が横行し、基本的人権が否定されている」というコメントを発表した。

©iStock.com

 とりわけ奥さんであるキャロルさんの接触禁止という、国際人権規約に違反することが明白な保釈条件に絶望していたのだという。

 ボクにはゴーンさんの気持ちが痛いほどわかる。拘置所で水谷恭史弁護士から

「保釈されても夫婦間で接見禁止がつくだろう。奥さんと一緒に住むことは無理だと考えておいてもらいたい」

 と告げられたとき、どれほど辛かったか。 ボクは、

「家内と一緒に住めないのなら、ずっとここに居続ける」

 と言い張っていたのである。

 幸い、ボクの場合は弁護団の尽力があり理解のある裁判官だったため、共犯でありながら保釈後も同じ屋根の下で暮らすことができている。

ゴーンさんに裁判で戦ってほしかったが

 ゴーンさんの逃亡についてはいろいろな意見があるだろう。ボクとて裁判で戦ってほしかったという思いはある。

 ただし彼の心のうちにも思いを馳せてほしい。

 そして日本の刑事司法がいかに前近代的であるかも知っていただきたい。弁護士の立ち会いもなく、70日の間、休むことなく連日7時間の取り調べを受けるということが、欧米の人権感覚では考えられないということを。

 ゴーンさんの逃亡がキッカケで、検察庁の言うがまま保釈条件が厳しくなるのは、国民にとっても悪夢でしかないのである。

国策不捜査 「森友事件」の全貌

籠池 泰典

文藝春秋

2020年2月13日 発売

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